2024年4月9日、「ミシュランガイド京都・大阪2024」の新たなセレクションが発表されました。私たちはインスペクターに、過去1年間を振り返り、京都・大阪で体験した数々のダイニングエクスペリエンスから特に記憶に残る料理を選んでもらいました。
インスペクターから共有されたリストは、その季節だからこそ味わえる一品、伝統を受け継いだ料理、シェフの経験や感性から生まれたものなど、バラエティに富むセレクションとなりました。
「鯉のから騒ぎ」
草喰 なかひがし 京都鯉の身は平造り、鱗は揚げ、皮は湯引きに。大原の山野草を合わせながら食す。酸味、苦味、甘味など食材の味わいを恋になぞらえ、酸っぱい恋、苦い恋、甘い恋と表現。一品に集約するため「鯉のから騒ぎ」と名付けた。
「洛北・鹿肉 ソースポルト」
ラ ブッシュ 京都大原の恵みを表現した肉料理。近隣の猟師から仕入れた鹿肉を薪火で焼く。ポルト酒のソースに、野山で手摘みしたワイルドベリーを加え酸味と甘みを調える。フランス料理と地元の食材への尊重が重なり合う。
「伊勢海老生揚げ 卵黄ソース」
凌霄 京都フランス料理のカルディナル風に想を得た一品。伊勢海老は半生に素揚げして甘みを引き出し、海老の香りを移した卵黄を合わす。フレンチとの交流で得た経験が、料理に独自性を与える。
「菊花蕪の煮物椀」
有職料理 萬亀楼 京都9月9日の重陽の節句にちなむ煮物椀。漆椀の蓋を開けると、菊の花のように飾り切りした美しい蕪が現れる。松茸も旬を迎える季節。ふんだんにあしらう菊花が、華やかさを引き立てる。
「鱧とあら炊き牛蒡の春巻」
二條 みなみ 京都あら炊き牛蒡を大葉と鱧で包み揚げした春巻。塩か山椒酢で味わう。簡潔な仕立てでありながら創意が宿る。器は尾形乾山の色絵皿写し。江戸時代とは思えない色使いが、今なおモダン。
「秋刀魚と大根餅のカオヤーピン」
ベルロオジエ 京都北京ダックをヒントにした秋の料理。秋刀魚はコンフィにし、大根餅、山椒風味の肝、揚げたカオヤーピンを重ねて生地で包む。一品に様々な食材を付け足し、相乗効果を図る“add on”がテーマ。モダンな中華を体現している。
「鱧と松茸のフライ」
要庵 西富家 京都割いた松茸に鱧を巻き、衣をまとわせ揚げる。色付いた柿の葉は秋の出会いもの。主人が子供の頃に食べたという松茸フライに着想した。洗練しつつも親しみやすい味わいが印象に残る。
「伊勢海老のうに和え」
徳ハ本也 京都野趣を追求してきた主人が魅せる炭火料理。鉢に炭と竹串を打った伊勢海老を立てて炙り、香ばしさをまとわせる。うにの甘みと磯の香りが相乗し、蕗のとうが春の訪れを予感させる。
「野菜と果物のサラダ」
ルポンドシエル 大阪20種以上もの野菜と果物による色鮮やかなサラダ。木苺の泡やパイ生地を合わせ立体的に盛り付ける。食べ進むうちに食感や風味の変化が楽しい。バランスは味わいだけでなく、高さのある盛り付けにも表れている。
「海 つながり」
ハジメ 大阪淡いブルーの器が海を彷彿とさせる。「海」をテーマとしながらも、山、森、川の食材で地球の生命のつながりを表現。手長海老、トリュフ、山菜など様々な素材とソースを合わせ、大地のストーリーを紡ぐ。
「熟成牛のロティ」
シナエ 大阪熟成肉の旨みをじっくり引き出す火入れ。フォンと赤ワインを融和させたソース。キャラメリゼしたアンディーブ。研ぎ澄ました感性で素材のエッセンスをシンプルに表現する。経験を詰め込んだ原点回帰の一皿。
「鮑と聖護院大根の椀物」
太庵 大阪薄切り大根を薄氷(うすらい)に見立てた冬の煮物椀。鮑と聖護院大根を椀種として、山海の幸を盛り込む。輪島塗の漆椀は、独楽文様が縁起良い。料亭で培った仕事と感性が生きる。
「カラスミとライムのバベッティーネ」
ア・カント 大阪パスタを得意とするシェフの自信作。自家製バベッティーネの小麦の香り、香草パン粉の香ばしさによるコントラスト。からすみの塩味と濃厚さを、ライムの苦味と酸味が引き締める。名物パスタここにあり。
「海老芋 マスカルポーネ ほうれん草」
カハラ 大阪海老芋にマスカルポーネチーズを合わせ、ほうれん草のソースを流す。惜しまないキャビアが格調高くさせ、半透明のガラス皿もアートな感覚。北新地に店を構えて半世紀、数々の斬新な料理を生み出してきた。
「せこ蟹の八寸」
柏屋 大阪北新地 大阪漁期の限られる雌のズワイガニを堪能する八寸。脚身、外子、内子は蟹酢や蟹だしで味を調え、胴身はキャビアとウニで和える。五つの仕立てで器に盛り込む。蟹の披露から板場で盛り付ける光景も楽しみ。
「鱧と黄身酢」
澤田 大阪簡潔でありながら個性に富む。鱧の骨切りと湯引きを目の前で行い、牡丹の花に見立てる。黄身酢は鱧だしで繋ぐ。一つの素材を余すところなく調理して味を深めている。カウンター割烹の技が生きる。
「栗のプリン ラム酒風味のコーヒーゼリー」
フジヤ 1935 京都秋のテーマは“焦げた匂い”。稲穂や落ち葉を燃やす匂いをデザートに投影している。箱を開けると煙が立ち昇り、燻された栗は渋皮煮のよう。グラスの中は栗のプリン、その上はコーヒーゼリーというのもどこか懐かしい。
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Top illustration:ⒸRyō-shō
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