2023年12月5日、「ミシュランガイド東京2024」の新たなセレクションが発表されました。私たちは何人かのインスペクターに、過去1年間を振り返り、東京で体験した数々のダイニングエクスペリエンスから特に記憶に残る料理を選んでもらいました。
インスペクターから共有されたリストは、その季節だからこそ味わえる一品、伝統を受け継いだ料理、シェフの経験や感性から生まれたものなど、バラエティに富むセレクションとなりました。
「ピジョンアンペリアルのパイ包み焼、サルミソース」
モノリス香ばしく焼いた流線形のパイ包み焼が美しい。中に鳩の胸肉とミンチ、トリュフ、フォワグラ、ほうれん草。内臓のサルミソースは重くなりすぎないように進化させたもの。古典料理の進化形を味わいたい。
「ふぐキャビア」
かんだ日本を代表する冬の味覚ふぐ。キャビアという西洋食材、オールドバカラのグラスにパリの和食店で培った感性が生きる。ふぐ、キャビア、胡麻豆腐が響き合う三重奏。日本料理の伝統とモダンが交錯している。
「新子と椎茸の握り」
広尾 石阪すし好きに愛される夏の新子。一貫に三枚付け、繊細な身を酢が引き締める。椎茸の握りは、南魚沼の八色しいたけに感動したことから考案。焼き椎茸の香ばしさと柑橘の爽やかさが馴染む。
「車海老と煮蛤の握り」
青空吟味されたすし種はどれも最上級。海老は茹でたての温かさが甘みを引き出し、味噌の位置も図られている。煮詰めをあてた蛤は旨みが凝縮。握りの姿は実に美しく、味わいに品格がある。
「淡水-225 MASL 西瓜、じゅん菜、鮎」
マスイワナ、西瓜、じゅん菜に鮎の粉末を重ねた独創性。日本の食材でペルーの食文化を表現している。器の下敷きは、アマゾン川の淡水魚の皮。スピリチュアルな雰囲気さえ漂う。
「焼き胡麻豆腐とうすいえんどうのすり流し」
久丹うすいえんどうの青い香りが漂う。蛤も旬を迎える季節。焼いた胡麻豆腐は、香ばしさと滑らかさが対比を成す。すり流しの鶯色が芽吹きを連想させ、上蓋の草花と蝶が春の訪れを知らせる。
「ロブスターと赤海老のリングイネ」
イル・リストランテ ニコ・ロミート乾麺ならではのアルデンテ、ソースは甲殻類とトマトの旨みが濃縮している。イタリアンレッドのパスタに調和する器はリチャードジノリ。古伊万里の影響を受けたジャポニスムの絵柄も意味深い。
「極みエノキのソーセージ」
トワヴィサージュソーセージの中にたっぷり詰めたエノキダケ。野菜のブイヨンを煮詰めたソースは艶やか。鶉の半熟目玉焼は、焼鳥のつくねにヒントを得た。料理は画竜点睛、名脇役の食材は主役を引き上げている。
「春野菜のお浸し、桜鱒の天ぷら」
六雁生産者から届く季節の便りを味わう一品。新緑を伝える、そら豆やえんどう豆。食べ頃を迎えた淡路島のトマト。加減酢のジュレが味わいに輪郭を与える。北海道の春を告げる桜鱒の天ぷらが季節感を一層高める。
「トマト」
オマージュ色鮮やかなトマトに、澄んだゼリーとシャーベット。温度やテクスチャを変え、トマトの酸味や甘みを多重層に構築する。キャビアと燻香を移したソースが深い余韻を生む。素材へのオマージュを体現する料理。
「アナナス」
グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ沖縄からインスピレーションを受けたパイナップルのタルトタタン。沖縄の太陽を浴びたパイナップルと焦がしたメレンゲの香りに引き寄せられた蝶のチップスが美しい。果実の香りと甘みが凝縮する夏のデザート。
「ホワイトアスパラガスとハマグリのインペッパータ」
プリズマホワイトアスパラガスの瑞々しさ、淡い甘みとほろ苦さ。蒸したハマグリの旨みが相乗し、貝のエキスを乳化させたソースが食材を繋ぐ。胡椒の香りがアクセント。完成度の高さに驚かされた。
「宮崎産マンゴー ショートブレッド クレームシャンティ」
セザンマンゴーにスプーンを入れると、予想外の触感に驚く。果肉の下にソルベ、クリーム、メレンゲの層が成し上にはショートブレッド入りのクリームがたっぷり。シンプルながら独創性にあふれる。
「蛤、ルバーブ、ねずの実 静かな声」
白の器にルバーブと穂紫蘇の赤と紫が映える。蒸し煮にして軽く火を入れた蛤。ソースにコハク酸のうま味を効かせバターで繋ぐ。煎ったねずの実が香ばしく、ハーブやスパイスの香りが印象を残す。