いま地球の環境や資源などを守る行動が人類に求められている。ミシュランガイドが新たに始めた「ミシュラングリーンスター 」とは、環境や社会の問題と真摯に向き合うサステナブルなレストランを表す。美食を通じて持続可能な未来を見据えるシェフたちに目が離せない。
NARISAWA イノベーティブ
ミシュランガイド東京 2021 ニつ星
成澤由浩氏は日本の里山にある食文化と先人たちの知恵に敬意を払い、自身のフィルターを通して表現する“イノベーティブ里山キュイジーヌ”という唯一無二のジャンルを確立。
食材はどれも自然から生まれたもの。現在の自然環境は壊滅的で、このまま食べ続けることが可能なのか、と危惧する。地球にとって最も大切なのは森ととらえ、料理に強いメッセージ性を込める。「土のスープ」「炭」「森のエッセンス」など、次々と代表作を発表。「里山の風景」には、森の景色を投影した。森の生態系を守るミツバチがシンボルマーク。
フロリレージュ フランス料理
ミシュランガイド東京 2021 ニつ星
川手寛康氏が着目したのはフードロス問題。食べられるにも関わらず廃棄されてしまう経産牛でスペシャリテを生んだ。ソースにしたコンソメには野菜の端材を使い、不要土で作られた皿に盛り付ける。店内の壁は間伐材、床のタイルは廃材で設え、食材以外にもサステナブルな面を見せる。
ゲストに配られるカードには、食品ロスの現状と、食材の背景や生産者への思いが綴られている。
シンシア フランス料理
ミシュランガイド東京 2021 一つ星
石井真介氏の信条は “おいしい食べ物は人を喜ばせる”料理は創造力と遊び心に富む。
その代表作が「白身魚のパイ包み焼」。日本人に馴染みの鯛焼と、フランス古典のスズキのパイ包み焼を重ね合わせた。その魚の姿がシェフからのメッセージであるかのように、海のサステナビリティと向き合う。海産物の枯渇を危惧し活動する。海の現状を知るための勉強会を催し、料理人に何が出来るかを考え、世に広めるのが主な活動。枯渇する魚は使わず、料理を通じて水産資源問題を発信している。シェフ自ら料理を運んで説明する姿が印象深い。
毎年従業員が地元市民と田植えをする。農薬や化学肥料を使わず、料亭や割烹店で供した蟹の殻を天然肥料として田んぼに撒くというのも環境に優しい。自ら森を再生し、環境に配慮した農作を行う。
都会に店舗を構えるシェフたちは、サステナビリティの意識が高く、都会ならではの発信力で社会に貢献している。一方、地域に根差す店は、自然と共存しながら環境保全に向き合う傾向にある。ミシュランガイドが今後も期待するのは、食のサステナブルを考える同志が一人でも増えること。すべては持続可能な未来のために。