Dining Out 2 分 2025年1月13日

「グランメゾン東京」料理監修:三つ星「カンテサンス」岸田周三シェフのフレンチ業界にかける想い

リアリティを追求し、画面を通して“おいしさ”を伝える立役者。その真意とは。

2019年に放送され、多くの作品ファンを生み出した木村拓哉主演のTBS系日曜劇場「グランメゾン東京」。2024年12月29日に、スペシャルドラマとして、「グランメゾン東京」が放送された。
前作に続き、料理監修を務めるのは、「ミシュランガイド東京2025」の三つ星「カンテサンス」岸田周三シェフ。
グランメゾンを通して知る岸田シェフの想いや、シェフ視点でのドラマ・映画の楽しみ方を独占取材。


なぜ料理監修を引き受けたのでしょうか?

10年以上前、木村拓哉さん主演の美容師のドラマが一世風靡し、カリスマ美容師という言葉と共に、美容師を志す若者が増えた時代がありました。私は同じ現象を料理業界にも起こしたいと思っています。
「グランメゾン東京」のお話をいただいた時、本作品はそのポテンシャルがあると確信しました。料理人を志す若者が増え、業界全体を盛り上げる一助になればと、今回のオファーを受けさせていただきました。
また、本作品は、飲食業界の担い手を増やすだけではなく、普段フランス料理店に足を運ばない方々への影響も大きいのでは、とも考えました。ドラマは料理専門番組やグルメ雑誌を見ない方々へも広がる大きな力を持っています。
そのためにはフェイクでなく、現実味あるフレンチレストランを映し出さなければならない。全うすべき仕事だと強く感じました。

どのようなことを念頭に置き、料理監修をされましたか?

ドラマで登場した料理は、カンテサンスで提供している料理がほとんど。そのため、映像用に見栄えを良くするのではなく、リアリティを追求していくということを頭に入れ料理を考案しました。実際見た目にも華やかで、食べてもおいしい料理を提供できたと思っています。
また、料理主体ではなく、ドラマのストーリーあっての料理であることは常に頭の中にありました。今カンテサンスで提供している料理、新たに考案した料理だけではなく、自分で書き溜めた古いレシピも引っ張り出しました。ドラマのストーリーを加味し、視聴者が納得できる組み立てを考えていましたね。

連ドラシリーズで登場した「山羊のババロア」はカンテサンスで提供する品。ドラマのひと皿を求め足を運ぶゲストもいるという。ⒸQuintessence
連ドラシリーズで登場した「山羊のババロア」はカンテサンスで提供する品。ドラマのひと皿を求め足を運ぶゲストもいるという。ⒸQuintessence

苦労はありましたか?

まず、前回の連ドラシリーズと、今回のスペシャルドラマは同じ、秋冬のストーリーだったのは大きな挑戦でした。どうしても扱いたい旬の食材が重複するのです。そのため、前回のドラマシリーズを見返しながら、なるべく食材や調理法が重ならないように気を付けましたね。
また、ドラマならではの苦労という点では、同じ食材で料理対決するレシピには一捻り必要でした。なぜなら、料理の完成度に強弱をつけなければならない。普段はベストオブベストを追い求めるので新たな挑戦でした。実は平古シェフの調理ミスは、私が若かりし頃にした失敗です。それがあったからこそ今があります。

平古シェフ(玉森裕太)作「伊勢海老のロティ オールドリカールのジュとアリゴ・フリット」ⒸTBSスパークル/TBS
平古シェフ(玉森裕太)作「伊勢海老のロティ オールドリカールのジュとアリゴ・フリット」ⒸTBSスパークル/TBS

料理人ならではの見どころは?

提供の瞬間の料理に着目してください。
私は普段から、できたての料理を心掛けています。キッチンで皿に盛られた瞬間が一番おいしく召し上がっていただける状態で、一秒追うごとにおいしさは損なわれていく。私は映像であれ、温度感は伝わると信じているし、そうでないといけないと考えます。
リアルの追求という観点から、できたての状態で撮影していただけるように努めました。
料理が提供された瞬間の温度、香り、質感を映像から感じ取っていただけると、ドラマの楽しみが二倍、三倍に増えるのではと思っています。
また、一皿の料理ができるまでに様々なエピソードや想いがあります。それはシェフだけではなく、生産者さんやキッチン、ホールスタッフも同じです。説明している間に料理が冷めてしまうので、カンテサンスでは多くは語りません。
本作品を通して、料理に携わるすべての方々の想いが、少しでも伝わればいいなと願っています。


「グランメゾン東京」あらすじ

オープンからわずか一年でミシュランガイドの三つ星を獲得。アジア人女性初の三つ星レストランのシェフとなった早見倫子(鈴木京香)だったが、その直後、世界各国で新型コロナウイルスが蔓延し飲食業界は大きな打撃を受けた。「グランメゾン東京」も例外ではなく、生き残りのため大手企業傘下のフードコンサルティング企業と資本提携を結び、通販用の冷凍食品やレシピサイトに活路を見出していた。しかし、倫子は店を維持することばかりを考えて料理への純粋な情熱を忘れてしまったようだった。見栄えだけの料理によって「グランメゾン東京」はミシュランの星を減らし、ついにすべての星を失ってしまった。
一方、パリに行ったはずの尾花夏樹(木村拓哉)は姿を消し、連絡が途絶えていた。
倫子は「グランメゾン東京」を維持するために資本提携を決断したことに責任を感じていた。契約上受けざるを得ない、“シェフ”とは程遠い仕事をこなす中、倫子と久住栞奈(中村アン)はオープンして間もないにもかかわらず今年の世界トップレストランにノミネートされると噂になっていた、一日一組限定のフレンチレストラン「メイユール京都」を訪れる。コース料理を食べすすめていくと、倫子はその店に尾花がいることを確信し──。
音信不通だった尾花が日本に戻って来た目的とは!? すべての星を失ってしまった「グランメゾン東京」は、もう一度立ち上がることができるのか?
スペシャルドラマはTVer、U-NEXTで配信中

ⒸTBSスパークル/TBS
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Top Image: ⒸTBSスパークル/TBS

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