美しいドレス、素晴らしい芸術品、おいしい料理など、良いと決めつけるのは簡単です。しかし、このような単純な説明では、作品の背景にあるストーリーを評価することはできないでしょう。
そもそも「良いもの」とは?血と汗と涙の結晶が生み出すものでしょうか?
そこでミシュランガイドのインスペクターに、食への考え方やおいしさが何を意味するのかを語ってもらいました。
おいしい料理の基準
ミシュランガイドは、魅力的な食事やおいしい料理についての記述があります。その中でもインスペクターたちの意見が一致したのは、食材の質が料理の根幹であること。「優れた食材なしに、おいしい料理は作れない」。では、熟練のシェフが冷凍食材を使って、美食を作るのは不可能でしょうか?インスペクターは、「熟練であればあるほど、食材に妥協しない」と話します。あるインスペクターは、「調理する前に食材を披露してくれるレストランもある。質の良い食材を自分の目で確認することで、その食事が一定の水準を満たしているかが分かる」と言います。
卓越した食の秘訣
良質な食材を使っても、記憶に残る料理はそう簡単には思いつかないのでは。との質問に、シェフの感性も求められるとインスペクターが明かした。「良い料理はとても印象に残ります。例えば、蒸した魚に醤油と葱を添えた料理も良いが、四川の山椒を加えることで更においしくなる。このように個性によって、記憶に残る素晴らしい料理になる」。更にそれぞれの食材が持つ本来の風味と食感の特徴を尊重する必要がある。「この魚の食感は蒸すのに適しているかもしれない」。卓越した料理を作るには、食材のニュアンスとシェフのスタイルのバランスを取ることです。コミュニケーションが鍵
料理は調理場で完結するものではありません。良い料理の背景には、伝えたい想いやメッセージが込められています。「サービスチームが、料理をどのように紹介するかによって、シェフの考えがゲストへ伝わります。例えば、多くのレストランでは、「おばあちゃん秘伝のレシピ」やシェフが幼少期にインスパイアされた料理を紹介している。しかし、誰もが同じ時間を過ごしたわけでも、同じ祖母でもないので、同じつながりを感じることは難しい。どうすれば心に響くのかを考え、ゲストが想像する余地を残しておくべきなのです。
味覚を磨く
数多のレストランの中から、どのようにミシュラン一つ星、二つ星、三つ星を決めるのでしょうか。「私たちは食べれば食べるほど、また、時間をかけて経験を積めば積むほど、食体験が深まります。この経験が豊かになるほど、おいしい料理から卓越した料理まで見分けられるようになるのです」。*この記事はWhat Does “Good Food” Mean To A MICHELIN Guide Inspector?を基に、MICHELIN Guide Japanで再編集しました。
Top Image from Shutterstock