すしのルーツは熟れずしや鮒ずしの発酵保存食です。文献によると1300年前の奈良時代まで遡ります。握りずしは江戸時代の東京、屋台が始まりと言われています。氷はなく、流通も盛んではなく、東京湾の魚を塩や酢に漬けたり、そして煮たりと工夫を重ねました。それが江戸前の仕事です。先人から受け継いだ知恵といまの進化を紹介します。変わらないことは変わり続けることでもあるのです。
江戸前の技でさらに光る 小肌
寿司ネタになるべくして生まれてきた小肌。焼物や煮物には向かない。ところが、酢と塩で締めると精妙な味になる。
日本橋蛎殻町 すぎた
杉田孝明
ミシュランガイド東京 2021 一つ星
江戸前の花形 鮪
赤身は漬けにせず、純粋な香りを重視する。トロは寝かせて脂の旨みを楽しむ。豊洲の舞台には、関わる人々のドラマがある。青空
高橋青空
ミシュランガイド東京 2021 二つ星
親父の背中を追いかけて 鰹
親父は、世界一有名な寿司職人、小野二郎氏。藁で燻した鰹は燻香が素晴らしい。香りが最も味わえる一貫。すきやばし次郎六本木店
小野隆志
ミシュランガイド東京 2021 二つ星
夏の終わりのハーモニー うに
晩夏に味わった唐津の赤うには、奈良漬けが添えられる。濃厚なうにと熟成した酒粕の風味が調和する。木挽町 とも樹
小林智樹
ミシュランガイド東京 2021 二つ星
日本育ちならではの深いお辞儀 車海老
つけ台からはみ出した車海老。早く受け止めないと、飛び込みそうだ。大振りな一貫を頬張れば、口福の二文字が浮かび上がってくる。東麻布 天本
天本正道
ミシュランガイド東京 2021 二つ星
熟成させた旨みの頂点 すじこ
独自の熟成法を確立。すじこは塩漬けと乾燥を重ね旨味を凝縮。ねっとりした食感と硬めの酢飯が対比を成す。すし 㐂邑
木村康司
ミシュランガイド東京 2021 二つ星
寿司漫画との出会いが原点 煮蛤
寿司の漫画に影響を受け韓国から来日。ひたむきな姿は主人公と面影が重なる。煮蛤は江戸前の代表格の一つ。やわらかさと貝の旨みが持ち味。すし家 祥太
ムン ギョン ファン
ミシュランガイド東京 2021 一つ星
噛むのも忘れる 穴子
継ぎ足しの煮汁で炊く穴子は、とろけるほど柔らかい。これほど優しく握る寿司はない。くろ﨑
黒﨑一希
ミシュランガイド東京 2021 一つ星