枠にとらわれない料理で、国際的に高い評価を受け、世界各地で数々の旗艦レストランを展開するシェフ、ジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリステン(Jean-Georges Vongerichten)氏。京都・祇園の「Jean-Georges at The Shinmonzen(ジャン-ジョルジュ アット ザ シンモンゼン)」などのレストランを手がける彼が、うどんから天ぷら、バーといった京都のお気に入りを語ってくれた。
『ミシュランガイド京都・大阪2025 』では、自身のレストラン「Jean-Georges at The Shinmonzen 」が一つ星に選ばれた。「本当に誇らしい気持ちです。ハナ・ユーンシェフは、ニューヨークで6年間私と一緒に働いてきました。彼女は、韓国に住む家族の近くにいたいと考え、京都に移ってここの厨房で指揮を執ることになったのです。彼女の料理への真摯な姿勢が、ミシュランの星という評価につながりました。」と語る。

ヴォンゲリステン氏にとって街を知る一番の方法は、人からのおすすめだ。
「今は多くの人がGoogleマップなどで検索しますよね。でも、私の場合は、京都では、口コミに頼ります。」とシェフは言う。「人から行って良かった場所を聞いて、そこへ行くのをいつも楽しみにしているんです。京都は風情のある店が多いですし、本当に素敵な場所を見つけるなら、地元に相当詳しくなるか、そういう人と知り合うのが近道だと思っています。」

それでは、教えてください。あなたにとって京都で意外性のあるモダンな一軒といえば?隠れた名店はありますか?
「monk」は、レストランというより禅を感じさせる隠れ家のような、わずか14席の店です。哲学の道沿いにひっそりと佇んでて、そこを訪れたときのことは今でも覚えています。蒔窯の香りにやわらかな照明、そして穏やかな静けさ。シェフの今井義浩さんは、日本で最も尊敬される料理人の一人だと思っています。毎日、大原の農家から食材を仕入れ、自らハーブを摘み、それらの素材を蒔の火で見事に変身させてゆく。ここのピザは、これまで食べたなかで間違いなくトップクラスです。
京都でお気に入りの滞在先はどこですか?
.やはり、「The Shinmonzen」です。 私はこのThe Shinmonzenプロジェクトに招かれ、そして、レストランの設計をしました。ホテルの建築やデザインは、歴史的な趣とモダンな感覚が同居しています。まるで静かな祇園の通りを抜けて、別世界に足を踏み入れたかのような感覚です。部屋は白川を見渡せる9室のみで、私にとっては、そのテラスで朝の抹茶をいただくのは至福の時です。毎朝10時頃に川辺にやってくるサギとも、いつの間にか顔馴染みになりました。

京都でほっとするような、やさしい一杯を味わうなら?
「おめん」は、気取らない一杯のうどんを食べに行く店です。手打ちうどんに、香り豊かな出汁と、軽い揚げ上がりの野菜の天ぷらの組み合わせは驚くほど素晴らしい。以前、供されていた揚げ出し豆腐も格別で、外はサクッと、中は滑らか。シンプルでありながら風味豊かな出汁が寄り添う一品でした。
印象に残る天ぷらの店といえば?
「圓融菴 小林(Enyuan Kobayashi)」は、シンプルな料理を驚くほど高いレベルに昇華できることを示すお手本といえます。こちらは祇園にある静かな雰囲気のお店です。カウンター席からは すべてを間近で見ることができます。小林シェフの技術は精度が高く、衣はサクッと軽いし、まったく油っこさがありません。天ぷらだけでないところも良いですね。メインとなる天ぷらに移る前に、鰊の煮付けや川魚の焼き物といった季節の小皿料理から始まります。そして最後に、心満たされる天丼が供され、全体を見事にまとめ上げます。
夜に訪れるお気に入りのバーは?
祇園の路地裏に佇む「The Common One Bar Kyoto」は、まさに隠れ家的なバーです。ほの暗い照明で親密な雰囲気があり、カクテルも素晴らしい。丸一日たっぷり歩き回った後でくつろぐのにぴったりな場所です。
Hero Image: Portrait of Chef Jean-Georges Vongerichten. © Colin Wee/The MICHELIN Guide