持続可能な未来のためにアクションを起こしているのは、ミシュラングリーンスターのレストランだけではありません。食に携わるすべての方々が次の世代に繋ぐ未来のために活動しています。
本記事では、ミシュランガイド掲載店の食材選びにフォーカスしました。今日もレストラン関係者はそれぞれの信念に基づき、サステナブルな食材をキッチンへ運び入れます。
鮨 三心 /Sushi Sanshin(大阪/寿司)
「2020年より滋賀県守山市で『三心米』を作り始めました。スタッフや仲間と一緒に田植えから稲刈りまで携わることで、文化継承に貢献していきたいです。日本では農業、漁業共に、未来へバトンを渡す時期にきています。私たち料理人が一次産業から関われば、組合のシステムを始め、商業的なこと、後継者問題など様々な問題点を可視化できると思います。そして、これからの一次産業の在り方、自然を守ることの重要性、未来の理想像を感じていただければと願っています」。
オリジン /ORIGIN(大阪/フランス料理)
「私達は持続可能な漁獲をする漁師、自然に近い環境で飼育する畜産家、福岡正信氏が提唱する自然農法を実践する農家など、地球に寄り添う生産者とお付き合いするようにしています。
市場だけではく産地へ赴くようになり、磯焼けや干ばつ、家畜の病気などの実態を知りました。今は産地と協働し、問題解決に努めています。
良い物を仕入れるだけの“傍観者”ではなく、一緒に海を守っていく“当事者”でありたいと考えています。 飲食店が出来ることは限られていますが、環境に配慮した食材を使用し、レストランにいらっしゃる方に理解を深めて頂ける様に努力して参ります」。
五條 源兵衛/Gojo GENBEI(奈良/日本料理)
「朝は畑で野菜を見て献立を考えることから始まります。契約農家の朝採れ野菜を使用しながらも、私たちでも少しずつ畑を始め、そこで採れた野菜で料理をしています。私たちが力を入れている社会的活動のひとつが『ローカルガストロノミズム』です。食だけでなく地域や歴史的街並みの紹介も含まれると考えています。エンターテイメントとして、多角的に五條野菜を堪能して頂けるように。奈良五條にお越しいただく価値の創出を目指しています」。
閼伽井/AKAI (京都/日本料理)
「以前は毎月の献立を考える時、予め使用する食材を8割方決めていました。しかし、コロナ禍で大変な中お越しになる国内外のお客様に、その時一番おいしものを提供したいと考え、食材を見て献立を組むようになりました。日々買い出しに走りまわり、試行錯誤した結果、新たな料理が生まれるという驚きもありました。不揃いで形がいびつな規格外の食材でも、料理をするには十分事足りる。それらをいかにおいしく仕立てるかが料理人の腕の見せ所です。人間のからだは食べたもので作られています。素材本来の持ち味を生かすことで、調理法が抑えられ人にも環境にも優しい料理を実現できるのです。
今後も地産地消、フードマイレージ(野菜類は地元滋賀産を多く使用)や食品ロス低減など、できることから少しずつ行動していきたいです」。
アルシミスト/Alchimiste(東京/フランス料理)
「マダムの地元茨城の自社農園で菊芋を育て始めました。茨城では農業従事者の高齢化により、未活用の畑が増加していると伺っています。関東近郊に農園を作ることで、フードマイレージ削減にも繋がると考えます。食料自給率を上げる為、国内の食材を主に使用し、消費宣伝及び国産品の品質に関する啓発活動にも貢献したいです。
アルシミストの代表料理『菊芋×雲丹』では、自社農園で採れた菊芋を、皮や花など余す事なく使います。地球環境や人々の健康に考慮し、食料生産を維持していくことの重要さを、料理を通じて訴求していきます」。
今回紹介したレストランはほんの一部。持続可能な地球環境を目指し、行動している料理人や関係者はまだまだたくさんいます。
レストランを選ぶ時はもちろんですが、スーパーマーケットで食品を手に取る時や自宅のキッチンで調理する時など、日常のふとした時に思い出し、これらの行動がサステナブルアクションのきっかけになれれば幸いです。
Top Image: 「ガッツうまい米橋本」の橋本氏(左)と「鮨 三心」店主石渕氏(右) ⒸSushi Sanshin
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