大原の朝は静謐な空気が澄み渡る 。 赤 いスポーツカーに乗って颯爽と現れたのは、銀閣寺道、白川沿いに位置する 「草喰 なかひがし」店主、中東久雄氏。鮮やかなオレンジ色のスカーフと、黒いハットを身に付けた姿は今から畑に入るとは思えないほど。
バッファローホーンで作られたサングラスをかけ、「おいしい草を見つけるには、牛の目にならないとね」とユーモアを交え頬笑む。
京都洛北、里山の裾野に田園風景が広がる、花脊で生まれ育った中東久雄氏 。幼少期から野山に慣れ親しんできたため、今の習慣や価値観はごく自然なこと。
「切り倒された木を椅子やテーブルにし、生命を蘇らせるような仕事をしたい」と文集に書き記していた。「今は引っこ抜かれ、生命を絶たれた植物や野菜を調理することで、再び命を吹き込む仕事。何か通じるものがありますね」。
中東久雄氏は毎朝大原の山に赴く。きっかけは店を始めた時、農家の方の一言が心に響いたから。そこから朝見てきた山の景色や風情を、料理に映して食べ手に伝える。「草喰 なかひがし」は、山で感じた氣や想いも紡ぐ 。
店を後にする頃には、不思議と明日への活力がみなぎり、自然と笑顔がこぼれてくる。
中東久雄氏の料理と共に、大原の季節の移り変わりを体感したい。
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