Sustainable Gastronomy 1 分 2024年4月18日

ミシュラングリーンスター、一つ星「ラ ブッシュ」 森シェフが表現するローカルガストロノミー

「ミシュランガイド京都・大阪2024」 にて初掲載されたフレンチレストラン。薪火を操り、ここでしか体験できない大原ガストロノミーを届ける

京都の繁華街から365号を北上すると一軒のフレンチレストランに辿り着く。大原で生まれ育った森尚平シェフが夫婦で営む「ラ ブッシュ」だ。

2024年4月9日に発表された「ミシュランガイド京都・大阪2024」一つ星 として初掲載。また、持続可能なガストロノミーに対し、積極的に活動するレストランに光を当てるミシュラングリーンスター にも選出された。

フランスでの修業経験もある森シェフは、地元に誇りを持つフランス人の考えに共感を覚え、故郷に店を構えた。「お客様を含め、多くの方々のおかげで一つ星、ミシュラングリーンスターを受賞できました。身に余る光栄に驚きつつも、お世話になっている方々に少し恩返しができたのかな、とほっとしています」と語る森尚平シェフに、受賞の喜び冷めやらぬ中、話を聞いた。

セレモニーで喜びを語る森シェフ ⒸMichelin
セレモニーで喜びを語る森シェフ ⒸMichelin

今まで学んできたことを表現する場

店名の「ラ ブッシュ」が意味するように、調理に薪を用いる。修業先で薪を使った調理に惚れ込んだ。薪を用いた調理は、食材ごとに最適な火入れができるのが良いところと森氏は言う。例えば、クレソンは油をまとわせ一瞬で火を通す。すると、香りを含んだ油と共に口へ運ぶとクレソンの香りが口内に広がる。
鶏を調理する時には遠火でじっくりと。鹿などの赤身肉は、七割ほど火を入れたあと、網の上で香ばしく焼き上げる。炙り感、グリル感、スモーク感が演出できるのだそう。

薪火での調理の様子 Ⓒla bûche
薪火での調理の様子 Ⓒla bûche

テロワールを大切に

扱う食材は大原で採れた野菜や果物。そして猟師から仕入れる鹿や猪。毎朝、大原道の駅に並ぶ野菜を見てメニューを組む。そのため定番はなく、一瞬一瞬の大原の四季を切り取った料理を味わうことができる。いつも野菜の種類が多いわけではないので、端境期こそチャレンジのし甲斐があると言う。この冬に印象的だったのがちぢみほうれん草。薪火があたるギリギリのところにおいて遠火で20分ほどじっくり焼く。一回茹でているため中は瑞々しく、外側は香ばしい食感を楽しめ、メインディッシュ並みの料理に仕上がる。

また、もっと突き詰めて食材や生産者と向き合いたい想いも。一昔前は食材の生産地や猟場、作り手まで辿り着くことは容易ではなかった。ただ、今トレーサビリティ(生産から消費までの経路を把握すること)が向上し、細分化されていると感じているという。「今は“大原の食材”を扱っていますが、将来は“大原の〇〇町の料理”など、その風土に根付いた料理を考案する構想があります。その土地を歩きながら感じることは多く、毎日、毎秒インスピレーションを受けています」。

厚みがあり色鮮やかなちぢみほうれん草 Ⓒla bûche
厚みがあり色鮮やかなちぢみほうれん草 Ⓒla bûche

大原の良さを伝え、守る

「今後も大原を盛り上げていきたいと思っています。ただ、静かなゆったりとした大原が好きな地元の方々もたくさんいらっしゃいます。今後は大原の静かで穏やかな雰囲気も大切にしつつ、多くの方に足を運んでもらえるような、バランスのとれた方法や活動をしていきたいと考えています」。

京都大原の景色 ⒸMichelin
京都大原の景色 ⒸMichelin

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