日本のウォール街と名を馳せた日本橋兜町エリア。近年の取り組みにより、新たなエネルギーが吹き込まれ注目を集めています 。東京証券取引所 の向かいに位置する「K5」もそのひとつ。パートナーと私はホテルでの滞在を通じて 、なぜ東京で人気のブティックホテルなのか、実際に体験してきました。
歴史をさかのぼること約150年前・・・
1878年 に東京証券取引所が兜町に設立され、銀行や証券会社が続々と 進出。瞬く間に経済の中心となりましたが、1990年代初頭のバブル崩壊を境に、その輝きは失われつつありました。時は流れ2017年、兜町の再開発プロジェクトが始動。 古き良さを残しながら、トレンドをおさえたカフェやショップが軒を連ね、新たな魅力を発信するようになりました。
K5という名は、兜町のKと、元々の建物名「兜町第5平和ビル」の5を組み合わせ、名前自体に意味を持たないというユニークな発想。そこに集まる人やコンテンツが主役になってほしいとの想いが込められています。渋沢栄一が設立した日本初となる銀行の分館は、日本人オーナーとスウェーデンの建築会社 Claesson Kovisto Runeによって、活気あるブティックホテルに生まれ変わりました。建物を尊重し、グレーの外観は当時のままです。こぢんまりとしたエントランスからは想像もつかないほど、内部は活気に満ちスタイリッシュ。最初に足を踏み入れた時、目的地を間違えたのかと思うほどでした。
リラックスした滞在
1階の緑が心地よいカフェで、ウェルカムドリンクをいただきながらチェックインした後、最上階 4 階のハイシーリングスタジオに案内されました。4.5メートルの天井の高さが、コンパクトな部屋に広々とした印象を与え、特注の北欧風家具がよく映えます。和風ファブリック、竹と和紙のランプシェードが室内をやわらかく照らし、心地良い空間が広がります。宿泊プランには、スナック、ソフトドリンク、アルコール飲料が入った無料のミニバーが含まれています。
K5 のユニークな特徴は、各部屋にテレビではなくレコードとプレーヤー が備え付けられていること。イギリス系ナイジェリア人歌手の甘いトーンが室内を包みこみ、リラックスした夜を過ごすことができました。
バスルームには、黒のシンク、杉の木の質感、鮮やかな青と白の幾何学模様のタイル張りの床。スイートとロフトの部屋には独立したバスタブがありますが、スタジオの広々としたシャワールームでも旅の汗を流すには申し分ありません。
幅広いダイニングオプション
K5 の1階にあるスペースは、異なる特徴のダイニングが植物、家具などで区切られています。中心となるのは、無国籍料理を味わえるオールデイダイニングcaveman 。カウンターバーではよりカジュアルなアラカルトメニューを。目黒、代々木八幡にもあるカフェSWITCH COFFEEは朝から夕方まで営業。それ以外にも、茶葉やハーブのカクテルを提供するライブラリーバーAoで、本に囲まれて一日を締めくくるのも良いですし、地下のタップルームで醸造したビールと一緒にメキシカンフードを楽しめるB by The Brooklyn Breweryに足を運んでみるのも良いでしょう。
cavemanは朝食会場も兼ねています。軽めながらもボリュームあるメニューは、自家製パン、スープ、カラフルなクスクス料理、サラダと野菜もたっぷり。ドリンクはSWITCH COFFEEのカフェラテを。最初は、追加メニューであるレモンパウンドケーキはもうお腹に入らないと思っていましたが、隣のテーブルにケーキが運ばれてくるのを見て、その誘惑に負けて注文してしまいました。
K5を後にして・・・
忘れないうちに。K5のスタッフは20代、30代が中心で、彼らはプロフェッショナルな仕事をしながらも、ゲストとフレンドリーにコミュニケーションをとります。通常礼儀正しく、一定の距離を保ちながらもてなす東京のホスピタリティシーンでは珍しいスタイル。カジュアルな雰囲気でありながら丁寧で細やかな対応が、このホテルの大きな魅力と言っても過言ではないでしょう。
スタッフたちと気持ちよく会話をしながら、正午にチェックアウトし、私たちは近所をゆっくりと散歩しました。威厳ある金融ビルと、新しいカフェ、ビストロ、ペイストリーが並んでいる兜町には、見どころや楽しみがたくさんあります。茅場町駅近くの日本橋日枝神社 はぜひ立ち寄りたいスポット。神社の境内に日が差し込む中、日本と北欧が融合する居心地の良い空間と、若いホテリエたちのプロフェッショナルかつフレンドリーなスタイルを思い出し、明るい兜町の未来を確信したのでした。
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