People 2 分 2022年4月8日

星付きレストランの女性パティシエールに聴く!

デザートに込めた想い。美しさと未来をクリエイトする2名のパティシエールと代表的な一皿を紹介。


これまでは、製菓の仕事のほとんどが男性中心だったが、近年日本では、女性のなりたい職業ランキングの上位を占めている。多くのパティシエールたちがその才能を発揮し情熱を注ぎ、女性の職業としての道を切り拓いている。

コース料理の締めくくりとして提供されるデザート。芸術的で洗練されたその美しさとおいしさに、ゲストは目を輝かせ、心躍らせる。デザートは食事の余韻に浸りながら、お腹だけでなく心も満たし、至福の時間を与えてくれる。

ファロ/イタリア料理 ミシュランガイド東京2022一つ星・ミシュラングリーンスター」 加藤峰子氏、「ローブ/フランス料理 ミシュランガイド東京2022一つ星」平瀬祥子氏に、デザートへの想い、そして次の時代を担う女性たちへ伝えたいことを伺った。

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東京生まれ。10代からイギリス、イタリアで過ごした加藤峰子氏。デザイン、美術、現代アートやモノづくりに興味を持ち、パン・製菓の道に進む。パティシエールになる夢を抱いてミラノのケーキショップに飛び込み、その後もミラノ、モデナ、フィレンツェの名高いレストランで研鑽を重ねた。現在「FARO」でシェフパティシエールをつとめる。
Photo:加藤峰子氏 ©FARO

 ©FARO
©FARO

サステナビリティを体現するデザート

加藤シェフは日本の自然や和のハーブをリスペクトしたデザートを創り出す。美食とは、表面的に美しくおいしいだけでなく、食の持続可能性を根底から考えることが極めて重要と語る。100年先を見据えて土地を次世代につなぐ農家。在来種や希少な品種の栽培に取り組む生産者の食材を使うことで支援している。日本ミツバチの蜂蜜は生態系の保護につながり、自然栽培のバナナは皮も捨てずにヴィーガンデザートに使う。出来ることから責任を持って次世代につなげていく、また仕事を通して愛情や情熱を伝えることを大切にしている。

「50年後も里山の美しい景色を残したい」という想いが込められたタルト

加藤シェフの代表作である「日本の里山の恵 花のタルト」。野花が咲き誇っていた自然の情景を表現している。植物性のタルト生地に豆乳チーズ、30種以上ものハーブや花で彩る。長いコース料理の最後に、お腹に溜まらず消化を助けるようなプティフールとして考案された。数十種類の薬草をアルコールに漬け込み、砂糖を加えて作られた苦みが心地よい。イタリアの食後酒アマーロからヒントを得たという。


「日本の里山の恵 花のタルト」©FARO
「日本の里山の恵 花のタルト」©FARO

「あなたはそのままで素晴らしい」

「ハンディも国境も越え、すべての人、そして女性が社会規範やステレオタイプに縛られることなく、自分が望む人生を選ぶこと。そして、リードできる世界を共に創れたら、食の世界はもっと輝き美しくなる。一緒に新たな価値観を築いていきましょう」と次の世代を担う女性たちへ力強くエールを送る。

©FARO
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真のプロフェッショナルとは

「確固たる目的を設定し、その達成のために努力を惜しまず必ず行動に移すこと。仕事に真摯に向き合い成長に貪欲でいること。できなかった理由を明確にして改善し、そのギャップを埋めていく作業を怠らないこと。常に考えること。妥協しないように自身を冷静に分析すること。失敗経験に学ぶこと。」
その言葉の数々には、日々ストイックに仕事と向き合う加藤シェフの揺るぎない信念が表れている。


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純白の調理服にポニーテールがトレードマークの平瀬祥子氏。一見クールな印象だがパティシエール人生にかける想いは熱い。熊本で生まれ、パン教室を主宰する母のもとで育った。地元ホテルの製菓で働いた後、「やりたい事は全てやりなさい。失敗も財産になるから」と母の言葉が背中を押し、2003年渡仏。パリのパティスリーとレストランで研鑽を積み、2016年夫の今橋英明シェフと「ローブ」を開業。
Photo: 平瀬祥子氏 ©L'aube

©L'aube 
©L'aube 

「ル レクチェ」との出会い

平瀬シェフの代表作「洋梨 薔薇」。“洋梨の貴婦人”と呼ばれ芳醇な香りを放つ「ル レクチェ」との出会いが考案のきっかけ。薔薇は本来の香りを楽しめるように、生花のまま凍らせてアイスクリームと合わせる。洋梨と薔薇の香りをベースに、ジャスミン、クランベリー、バニラなどの素材を組み合わせ、香水のようなアロマを創り上げている。

一期一会のデザート

平瀬シェフが考えるプロフェッショナルとは、生産者の想いを紡いで一期一会のデザートを創ること。生産者から盛り付ける器の職人に至るまで、さまざまな角度から下支えする人々への敬意を込める。

「洋梨 薔薇」©L'aube 
「洋梨 薔薇」©L'aube 

「性別や人種に関係なく、それぞれのステージに合った技術や経験を活かせる職場を作っていきたい」

フランスから帰国して、共に働く女性たちの厳しい状況を目の当たりにしたことが動機となり、結婚や出産によって女性がキャリアを諦めることのない環境づくりを目指す。当時は、妊娠・出産・育児に対する周囲の理解も浅く、責任ある立場まで働いたからこそ、職場に迷惑をかけまいと離職するケースもあったという。平瀬氏はそのような勤務体制に疑問を持ったことが、夫でありオーナーシェフでもある今橋英明氏と新しい会社を立ち上げる原動力になった。

©L'aube 
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「将来の選択肢が多い方が人生は豊かですね。そして誰もがその権利を持っている。」

「若く貴重な時間を自己研鑽に使い、経験を重ね、将来を見極めて歩んでほしいです。結婚や出産を機にキャリアを諦めるのはもったいない。辛い時期もあるけれど、その先にはやりがいや楽しみが待っていますから」とパティシエールを目指す女性たちに向けて語った。


加藤シェフ、平瀬シェフの言葉には、自らが行動し、新しい時代、道を切り拓いていくヒントが示されている。これからパティシエールを志す若い女性の指針や励みにもなるでしょう。シェフたちの更なる活躍に注目したい。


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Hero photo: ©FARO/ ©L'aube

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