Michelin Guide Ceremony 2 分 2024年11月8日

ミシュランメンターシェフアワード受賞「鮨 かねさか」金坂真次氏“すし職人の技と心を磨く”

銀座のマウンドに立つすし界のエース。すしを通じて世界の心を握る。

「ミシュランガイド東京2025」にて、鮨 かねさか/Sushi Kanesaka金坂真次氏がメンターシェフアワードを受賞した。

メンターシェフアワードとは、自身の仕事やキャリアが手本となる料理人に授与される。後進の育成にも力を注ぎ、指導者として熱意をもって助言し、レストラン業界の発展に貢献する料理人・シェフを称える賞である。

銀座のブランパンにて、記念トロフィーを受け取る金坂氏と、メンターシェフアワードスポンサーであるブランパンの増田氏ⒸMichelin
銀座のブランパンにて、記念トロフィーを受け取る金坂氏と、メンターシェフアワードスポンサーであるブランパンの増田氏ⒸMichelin

野球からすしの道へ

千葉県生まれの金坂真次氏。幼い頃、ご飯のおいしいところは長男の茶碗に盛られ、次男の真次さんにはいつも焦げたご飯が混ざっていた。
「いつかプロ野球選手になって、白いご飯を食べてやる」。悔しい想いが原動力となり、少年時代は野球に没頭した。

しかし次第に、野球への高い壁を感じ始める。たまたま下宿先がすし屋だったことから手伝うようになり、料理の世界へと舵を切る。
「目指すなら世界一」。そう心に誓い、すし職人としての人生を歩み始めた。



すしはオートクチュール

銀座にある「鮨 かねさか/Sushi Kanesaka」は、カウンター八席の店。
「人間には十本の指があります。一人のお客様に対して指一本。残り二本分の余裕をもって仕事をするという意味で八席なのです。

昔、野球では外野を守っていたので、打つ音や角度を見るだけでボールがどこに飛んでくるのか分かります。
カウンターでも同じ。例えば、お客さんが飲む湯呑の角度を見れば、お茶を継ぎ足さなければいけないタイミングが分かるでしょう。
お客さんに『お茶ください』なんて言わせてしまったらおしまいよ」。

また、金坂さんは、“おまかせ”という言葉が一人歩きしていると言う。
昔は、常連さんの嗜好を熟知した店主が、種の入ったガラスケースを前に、
『(あなたの好みは分かっていますので)お任せしていただけますか?』という意味で使っていた言葉。
今流行りの一斉スタートの“おまかせ”は、実は“おきまり”(すでに決まっているメニュー)であると。
銀座という土地柄、飲みに行く前に立ち寄ったり、飲んだ後に腹具合に合わせて少しつまんだり。
本来そういう使う方ができるのが、銀座のすし屋。

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「愛・勇気・気合」

事務所に掲げられたスローガンである。
愛は、感謝の気持ち。すし屋は一人では成り立たない。漁師、仲買人、師匠、仲間、そしてお客様。色んな方々がいて今の自分が成り立っている、という感謝の意を忘れてはならない。
勇気は、仲間を叱れる勇気。仲間たるもの切磋琢磨し、互いを高め合ってほしいと願う。
最後は気合。ビジネスは気合いである。寝ずに働けば何とかなる。そのくらい真剣に仕事に向き合うこと。



仕事場以外も学びの場

中堅社員を連れての滝行、元日のランニング、ゴルフコンペなど職場以外にも様々な学びの場を用意する。
「ゴルフに年数回行けば、ジャケットを着る機会ができるでしょう。そういう世界を知ることも修業のうち」。
ゴルフ場ではすり足はご法度。雪駄をはいて仕事をする「鮨 かねさか」でも、すり足をしたら雪駄の騒音が店に響く。
「ゴルフをすれば、自然と良い歩き方が身につくでしょう」。

また、かねさかでは、今でも連絡はメールではなく、FAXや手書きでやりとりをする。
それは直筆で書くことに意味があると考えるため。
毎日手書きでやりとりしていると、文面からその人の心境が分かり、「何かあったか?」と声をかけることができると言う。

技術習得だけが指導ではない。心の繋がりも重んじるのが金坂流。
すし職人としての心意気や、身だしなみに至るまで、金坂さんの目が光る。

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日々の積み重ねが職人の仕事

職人とは、毎日同じことを積み重ね、繰り返す人のこと。
すし職人も同じ考えという。
そのため、弟子には五つの「り」を大切にするよう日頃から説く。
しゃり、がり、あがり、のり、にきり(しょうゆ)
この五つの信念を肝心に仕込む。

また、魚や貝に手を加え、更においしくするのが、すし職人の仕事。
若い従業員には、手法と共に意味も伝えている。
「日々同じ仕事を積み重ねる。それがやがて伝統になるのです」。



すしを通して願う世界平和

海外にも店舗を構える「鮨 かねさか」は、すしのみならず日本の精神も世界に発信する。
「こんな素晴らしい国はないですよ」。
鮨一貫一貫に、日本魂を込め、自身の人生を映す。

「食という字は、人を良くすると書きます。その名のとおり、食を通して日本はもとより世界に貢献できたら」と目を細める。

他の料理と違い、素手で握るのがすし。
その手で隣の人と手を取り合えば、人種や性別の分け隔てなく、世界中が仲間になれるのではないか。

すし職人としてできることは、すしを通して世界平和を願うこと。
その想いが35年の職人歴を過ぎた今でも金坂さんを駆り立てる。

「まだまだ若い子には負けられない。
その気持ちがなくなったら、引退の時でしょうね」。
目指すは世界一のすし職人。その向上心は意欲に満ちあふれていた。

金坂真次は、今日も銀座で夢を握る。

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