一月七日 人日の節句/七草の節句
人日とは、“人の日”を表す。年明けから一日ごとに、鶏、犬、猪などの獣畜を当てはめて占った。七日目を人とし、人を占う日にしたのが由来。野草七種を粥にして食べ、邪気を払い、一年間の無病息災と五穀豊穣を祈る。
芽吹いた春の七草は、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。正月の祝い酒で弱った胃腸を整え、冬に不足しがちなビタミンを補う効果もある。
三月三日 上巳の節句/桃の節句
天皇家が三月三日に宴を開いたのが始まり。雛壇に豪華な人形を飾り、子女のために健康と成長を祈った。祝いに欠かせない食材として蛤がある。二枚貝は同じ殻同士でないと合わず、“貝合わせ”という遊びがあった。二つが合わさることを夫婦円満になぞらえた。
菱餅の色を表した敷き紙、蛤の殻の器でひな祭りを演出。春爛漫の雰囲気が漂う。
五月五日 端午の節句/菖蒲の節句
男子が武士の様に勇ましく育つように願う。田植えの時期と重なり、稲の豊作を願う儀式として菖蒲を軒先に吊るした。鯉は順応性が高いため立身出世の象徴とされ、鯉のぼりや鎧兜を飾る。菖蒲湯に浸かって邪気を払い、柏餅や粽を食べる。
献立は勇壮な男子を表現。皆敷に菖蒲や蓬の葉を用いて初夏の風景を連想させる。餅を笹の葉で巻いた粽は主に西日本、柏餅は東日本で親しまれてきた。
七月七日 七夕の節句/笹の節句
七夕と呼ばれる祭りは、天帝により離れ離れにされた夫婦が、年に一日だけ会うことが許された神話。魔除けの意味を持つ五色の短冊に和歌や願い事を書いて笹竹に吊るした。農作物の収穫時期に重なり、麦や野菜を供えて神に感謝した。
笹の葉をあしらう七夕の飾り付け。夏の食材を盛り込み、天の川に見立てた素麺を供すことも。梅雨明けの蒸し暑い時季のため清涼感を出す。
九月九日 重陽の節句/菊の節句
五節句の中で最もめでたい日。菊は不老長寿の霊薬として知られ、宮中で菊酒を飲んで長寿を願った。農村では収穫の終わりにあたり、節句と豊作を感謝する秋祭りが行われてきた。
漆黒の椀に鮮やかな花弁が映える菊花椀。菊花に見立てた蕪の姿、白と黄の対比が美しい。
古から受け継がれてきた日本の行事食。人々は幸せを祈願して食に願いを込めてきた。祭事や行事にまつわる食文化が日本人の暮らしを支えている。