Travel 5 分 2025年8月18日

世界の優れた建築とデザインのホテル:ミシュランアーキテクチャー&デザインアワード ノミネート5軒

単なる美しさを超えて、世界の優れた建築・デザインホテルは、陸・海・空いずれの地でも、滞在そのものを目的として設計された没入型の体験を提供します。

以下にご紹介するホテルは、世界でもほとんど類を見ない外観を備えています。しかし、その空間を手がけたデザイナーたちが目指したのは、単なる見た目のインパクトではありません。それぞれのホテルの建築やデザインは、滞在を引き立てる要素にとどまらず、滞在そのものが体験となるように設計されているのです。

あるホテルでは、巧みな設計によって、ゲストは訪れる目的であるサンゴ礁の海に溶け込むように過ごせます。別のホテルでは、革新的な構造が砂漠の大地の上に、涼やかな屋外空間をいくつも生み出しています。さらに別のホテルでは、建物が島に点在する美術館と一体化し、ゲストは展示空間と一体化した宿泊体験を味わうことができます。

ミシュランのインスペクターは、以下の5軒を「第1回ミシュランアーキテクチャー&デザインアワード」のノミネートホテルとして選出しました。2025年10月8日、ミシュランガイドはこの中から1軒を表彰するとともに、今年の世界を代表する魅力的なホテルを発表する「2025年ミシュランキー」も同時に公開します。


The Atlantis The Royal(ドバイ):屋内外の概念を再構築した高層建築
The Atlantis The Royal(ドバイ):屋内外の概念を再構築した高層建築

アトランティス・ザ・ロイヤル / Atlantis The Royal(ドバイ)

このホテルに滞在するゲスト:世界でも屈指の豪華な旅先で、圧倒的なスケールと体験を求める超高級志向の旅行者。

2023年に誕生したこのホテルは、進化を続けるドバイの都市景観に新たなシルエットを描き出しました。そのデザインは、外観の美しさだけを目的としたものではなく、従来のホテル建築や超高層建築の概念に新たな解釈をもたらしています。建物の前衛的な外観は、6棟のタワーがテラス状に張り出したブロック構造で連なり、それぞれが独自の空間や施設を備えています。互いに噛み合うように配置された構造は未来的でありながら、自然換気と日陰を生み出す無数の屋外空間をゲストに提供しています。

客室は「スカイスケープ」または「シースケープ」と呼ばれ、館内は水をテーマにした優美なインテリアで統一されています。これは、水の確保が日々の暮らしを左右したこの地域の歴史を想起させるものです。ホテルの多数の独立した建築ブロック群には、795室の客室・スイート、15軒のレストラン、そして建物の上層部をつなぐ壮観なスカイブリッジが設けられています。

特徴:
  • 高さ11.5メートルのステンレス製ロビー彫刻「ドロップレッツ(Droplets)」は、スイートルームの専用噴水や、館内のパブリックスペースに設けられた段々状のプールが調和。
  • 幾何学模様や精緻なガラス窓、職人技を感じさせる没入型の光の演出。
  • 先進的なLEDスクリーン技術による、7,200匹の海洋生物を収容するホテル内3つの水槽の背後で展開される映像演出。
  • 22階にある長さ90メートルのインフィニティプールから望む、パーム・ジュメイラと湾の壮大な景色。
コーン・ペダーセン・フォックスが手がけたその他のホテル:


Shebara Resort(サウジアラビア): 紅海に溶け込む未来的なクロームの真珠
Shebara Resort(サウジアラビア): 紅海に溶け込む未来的なクロームの真珠

シェバラ・リゾート / Shebara Resort(サウジアラビア)

このホテルに滞在するゲスト: サウジアラビアの手つかずのサンゴ礁の上で、親密かつ環境に配慮した特別な体験を求める、冒険心あふれるカップルや家族連れ。

サウジアラビア西海岸で進行中の大規模開発「レッドシー・プロジェクト」の一環として誕生したシェバラ・リゾートは、同国における“モルディブの水上ヴィラ”とも言える存在です。旅行者は色鮮やかなサンゴ礁でのダイビングやシュノーケリングを目当てに訪れ、このリゾートの革新的な建築は、繊細な海洋環境を守りながら、その魅力を称えるという理念を体現しています。
73棟のヴィラは、輝く真珠を思わせるデザインで、環境への影響を最小限に抑えるため現地外でほぼ完成させたうえで輸送されました。そのうち38棟は海上に直接建てられ、細い柱で支えることで海底への干渉を最小限に抑えています。ステンレス鋼の外壁は太陽の光を反射し、水面の映り込みを纏うことで自然に溶け込みます。

ヴィラは完全に独立した構造で、最適なプライバシーを確保するよう間隔を取って配置されています。先進的な設備として、大規模な自家用太陽光発電施設、淡水化および逆浸透プラント、オール電化の移動手段を備えています。これらの取り組みにより、LEEDプラチナ認証を取得しました。各“真珠”の内部は、外観同様に軽やかで洗練された空間。磨き上げられたスチールと特注家具が調和し、現代的な優雅さを演出しています。

特徴:
  • 水上と陸上、2つのタイプのヴィラ。インフィニティプール、ダブルデイベッド、屋外シャワー、一段低く設けられたラウンジスペースなどの設備。
  • 海を望む5つのダイニング。屋内で味わうシェフおまかせコース、ビーチ沿いの家族向けグリル、自家製パスタを提供するラボ、大人専用のプールバーなど。
  • ハマム(トルコ式スチームバス)を備えた屋内外スパ、ヨガパビリオン、テニス&パデルコート、複数の屋外プール。
  • 広がるサンゴ礁群を巡るシュノーケリングやダイビングのガイドツアー。夜間には、幻想的に光る海の生き物を観察する特別な体験も


Rosewood São Paulo(ブラジル):都市にそびえ立つ、自生植物の垂直庭園
Rosewood São Paulo(ブラジル):都市にそびえ立つ、自生植物の垂直庭園

ローズウッド サンパウロ / Rosewood São Paulo(ブラジル)

このホテルに滞在するゲスト: サンパウロの象徴的な大通りから徒歩圏内で、ブラジルの伝統と先進的デザインを贅沢に融合させた滞在を求める都会派や家族連れ。

20世紀初頭の歴史的建造物群であった「シダージ・マタラッツォ」開発地区は、現在では活気あふれる複合ライフスタイルセンターに変貌。その敷地から高さ93メートル・22階建ての大胆な垂直庭園タワーがそびえ立ちます。木製ルーバーに包まれたローズウッド・タワーの外観には、マタ・アトランティカ熱帯雨林原産の樹木1万本以上が植えられています。革新的な設計によって都市の環境課題に応えながら、自生植物を都会の景観に再び呼び戻しています。

客室やパブリックスペースには、ブランドの哲学である「Sense of Place(その土地らしさ)」が息づき、ブラジルの豊かな歴史と持続可能な未来を同時に称えています。木材や大理石、特注家具、そして57人のブラジル人アーティストによる450点のオリジナル作品など、使用される素材はすべて国内産です。

特徴:
  • 1930年代のジャズバー「ラボ・ジ・ガロ」の天井を彩る、抽象的な夜空を描き出した手描きの壁画(制作に68時間を要した精緻なデザイン)。
  • 都市の景観を望む屋上インフィニティプールと、熱帯植物に囲まれたファミリー向けの地上モザイクタイル張りプール。
  • 鏡張りの壁とブラジル産水晶400個以上を配したヒーリングルームを備えた最新鋭のスパ&フィットネスセンター。
  • 1922年に建てられ、国際的に著名なブラジル人アーティスト、ヴィック・ムニーズがデザインしたステンドグラスの円窓を新たに加えて改修されたサンタ・ルジア礼拝堂。
ジャン・ヌーヴェルが手がけたその他のホテル:


Benesse House(日本):瀬戸内海に息づくアートホテルの傑作
Benesse House(日本):瀬戸内海に息づくアートホテルの傑作

ベネッセハウス / Benesse House(日本)

このホテルに滞在するゲスト:現代アートやコンテンポラリーデザインの貴重なコレクションを、落ち着いた特別な環境で楽しめる静かな海辺の滞在を求めるアート愛好家やカップル。

ベネッセハウスの革新的なデザインコンセプトは、1992年に、プリツカー賞を受賞した日本を代表する建築家・安藤忠雄によって生み出されました。瀬戸内海に浮かぶ島のひとつ、直島に建つこの前例のないミュージアムホテルは、ギャラリースペースと宿泊施設を融合させ、それぞれ異なる建築的特徴と魅力、客室を備えた4つの棟から成ります。ミュージアム棟はミニマルなコンクリートの造形が海岸の地形に半ば埋め込まれ、オーバル棟は陽光あふれる柱廊に囲まれた屋外の水盤を中心に構成。パーク棟は、ここにある安藤建築の中でも数少なく木材を取り入れた施設で、屋内と屋外の境界を曖昧にしています。ビーチ棟は海面と視線の高さを揃え、まるで海に浮かんでいるかのような印象を与えます。

全65室の客室は4棟に分かれて配され、ミニマリズムと幾何学的なシンプルさで統一。控えめな調度や床から天井までの大きな窓が特徴で、海や庭園、遠くの四国山地を額縁のように切り取る眺望を意図的にデザインしています。

特徴:
  • デイヴィッド・ホックニー、ジェームズ・タレル、草間彌生、アンディ・ウォーホルらによるギャラリーやインスタレーション作品(空間芸術)へ、思わず何度でも足を運びたくなる没入感あふれる空間構成。
  • 海辺や近くの森に点在する彫刻群。屋内外を調和させた“生きた美術館”を形成。
  • ガラス越しに光と水景を望むレストランやスパ施設。
  • オーバル棟のみに設けられた6室の特別客室は丘の上に位置し、専用モノレールでアクセス可能。
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Villa Nai 3.3(クロアチア):アドリア海岸の斜面を切り込むようにして、地形を生かして建つホテル
Villa Nai 3.3(クロアチア):アドリア海岸の斜面を切り込むようにして、地形を生かして建つホテル

Villa Nai 3.3(クロアチア)

このホテルに滞在するゲスト: プライバシー、ウェルネス、自然、そして食の冒険を重視し、ヨーロッパのあまり知られていない島の目的地を求めるカップルや一人旅の旅行者。

アドリア海に浮かぶドゥギ・オトク島に位置する「ヴィラ・ナイ 3.3」は、丘の斜面を直接掘り込んで造られたエコラグジュアリーな宿泊施設です。掘削で得られた石は建物の主要素材として再利用され、排出量削減のための革新的な設計上の工夫となりました。広さ4万平方メートルのオリーブ畑に囲まれ、その畑では受賞歴のあるオリーブオイルが生産されています。ホテルの起伏あるデザインは、伝統的なダルマチア地方の建築技法から着想を得たもので、特にモルタルを使わず石を積み上げる「ドライストーンウォーリング」が特徴です。この技法により、地形に沿って形作られたテラスや壁が生まれ、建物と環境がほぼ一体化。島の荒々しい地形に溶け込み、ゲストが自然の中に身を委ねられるような空間を作り出しています。

建物の内部も外観に劣らず優美で、8室の客室はすべて天然素材で仕上げられています。イタリア産の大理石や木の仕上げ、落ち着いた色調が、ホテルの環境に配慮した理念を引き立てています。

特徴:
  • 天窓、独立型バスタブ、プライベートパティオを備え、室内と周囲の自然をシームレスにつなぐ設計の5室のデラックスルームと3室のスイート。
  • ジョルジェッティ社による、高さ1.6メートルの特注「ソーズ」シャンデリアが印象的なロビー。
  • ホテルの敷地内で生産される受賞歴のあるオリーブオイルを活かした料理を提供し、景観を切り取るガラス壁越しに周囲の風景も楽しめる館内レストラン。
  • 館内全体に持続可能な給水システムを導入。バスルームに供給する浄化・淡水化した水、海水プール、雨水再利用による灌漑に活用。
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Top image:サウジアラビア紅海沿岸のシェバラ・リゾート。水面のきらめく反射に溶け込むように佇む姿。

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