Travel 2 分 2024年4月17日

フランス風デザインの歴史的ホテルを知る:プロヴァンス地方の2 Keyホテル「ラ・ミランド(La Mirande) 」

フランス、プロヴァンス地方の中心で、かつて7人のローマ教皇が統治していた宮殿に程近い場所にあるラグジュアリーホテル、ラ・ミランド(La Mirande)。フランスの装飾芸術の幾世紀にもわたるタイムカプセルとも言えます。

2024年、ミシュランガイドは、MICHELIN Key―世界中で最も優れたホテルを示す新しい指標―を発表しました。ラ・ミランドはフランス国内の2-Keyホテルです。ミシュランのセレクションチームのコメントはこちら。

今回は、ミシュランのエディトリアルチームが、ラ・ミランドを象徴する歴史的ルーツ、デザイン、スペシャルアメニティなどの更なる魅力を紹介します。


列車でアヴィニョンに近づいたとき、突如として姿を現した街の巨大な城壁が、若い日にむさぼり読んだアレクサンドル・デュマの小説の騎士道ワールドに、私を放り込みました。現代世界に存在する古い石に魅せられたパリ在住ライターである私にとって、―この春にアヴィニョン一泊旅行をする理由である―ラ・ミランドでの一夜は、歴史ファンタジーの世界を体験することなのです。

パリ発の高速鉄道(TGV)によりわずか3時間足らずで、偉大な古典派の建築家、ピエール・ミニャールが手掛けた17世紀のファサードの前に降り立つことができます。その隣には大きくて、おそらく最も重要なゴシック建築の一つとも言える宮殿を見つけることができます。「法王庁宮殿」と呼ばれ、この輝かしい白い要塞は、かつてアヴィニョンの法王が西洋キリスト教世界を統治していた、14世紀の本拠地だったのです。

ラ・ミランドの歴史はこの奇跡の宮殿と密接に関係しています。ホテルに入り、アーチ型のドアをくぐって行くと、18世紀のロココ調の肘掛け椅子やベンチが彩るロビーに出ます。重厚感のあるカーテンや美しいシャンデリアが気分を高めます。金色に彩られた鏡の下でバロック様式の枝付き燭台が瞬き光りを放っている中で、私はこのホテルの支配人であるフランシス・ラコスト がオービュソンのタペストリーの下に立っているのに気がつきました。

設計の何世紀にもわたる道程を振り返る中、ラ・ミランドホテルは四半世紀余りの営みしかないものの、この旅は1300年代には始まっていたと語りました。教皇の近くにいるために枢機卿がこの建物を作ったのが始まり。実際、近接した宮殿とこの建物は、地下室と古い螺旋階段を通じて、目立たないように行き来できていたのです。


建物は1410年の包囲攻撃の期間に一部分が破壊され、数百年後に再建されました。1800年代に、ある裕福なアヴィニョンの家族が移り住み、この館を上流階級の友人をもてなす場として使いました。

ラ・ミランドが出費を惜しまず徹底した修復を試みたのは、この後者の時期のことです。ホテルの経営者は情熱を傾け、成し遂げました。コットンの伝統織物で壁を覆い、26の全客室にアンティーク家具のコレクションが備え付けられました。当時のベッドサイドとドレッシングテーブル、整理箪笥、小さな木製机、すべてがホテルのその場所に辿り着くまでに、何年もかかって探し出されたものでした。

案内された部屋(45号室)に入ってみると、すべてがフランス18世紀のアンシャンレジーム様式で、繊細なロココ調が効果をあげている素晴らしい織物に感嘆しました。あなたが鑑定家ならば、インドの織物に思いを巡らせてください。インドの織物は当時のヨーロッパを虜にしていました。

鑑定家でなくても、魅惑されるでしょう。魔法は解けることがありません。朝食は豪華なロココ式ラウンジで。また、バー、ビストロ、そしてミシュランの星付きレストラン、これらはすべてアヴィニョンの歴史的背景を取り入れています。私の部屋からは、ヤシの木が植えられた、時代を超越したプロヴァンス風庭園を見渡すことができます。夜には、アンティークの備え付けライトをほの暗くして、眠りに就きます。フランスの長い歴史に思いを馳せながら。

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訪問のヒント

ラ・ミランドに関する「よくある質問」は以下の通り。

訪問するのにベストな時期はいつですか?

ホテルは、一年中休みなくオープンしています。穏やかで静かな時を過ごしたいなら、夏の期間、特に7月はお控えください。この時期は演劇愛好家が「アヴィニョン・フェスティバル」に押し寄せ、隣の法王庁宮殿の中庭でイベントが開催されます。

エリア内のおすすめスポットは?

法王庁宮殿はユネスコ世界遺産に登録されており、ホテルから道をわたってすぐのところにあります。プロヴァンス地方の最も魅力あるモニュメントの一つです。法王クレメンス6世の書斎であった『鹿の間(the chambre du Cerf)』は、いたるところに狩猟シーンが描かれていますので、お見逃しなく。そう遠くないところで、有名な『アヴィニョン橋(Pont d'Avignon)』(正式名称は『サン・ベネゼ橋』)の現存している遺跡に出会うことができます。見事な中世時代の橋で、ローヌ川をわたるのに使われていました。さらに他にも歴史的、建築上の見どころが街のいたるところにあります。

カップルに最適な客室は?

20号室です。部屋の暖色系のファブリックで恋に落ちますし、教皇庁宮殿の息を吞むような眺めにもうっとりできます。また、バスルームのセメントタイルや、フランス人アーティストのソフィ・カルが鏡に残したアートワークを、見て楽しむこともできます。

知らないと見逃してしまうデザイン上の特徴はありますか?

喫茶室の壁を覆っているタペストリーは見逃せません。これは大きな木製のパネルに貼り付けられており、西欧的なテイストに沿って18世紀の中国で制作されたものです。ほかには、テレビが鏡台の中に格納されており、アンティークライトは調光できるようになっています。

食事をしたいときは?

ブリュッセルのタペストリーで装飾されたチャプターハウス内にあるミシュランガイド掲載レストランに足を運んでみては。フローラン・ピエトラヴァッレのプラントベースの料理で地元の豊かなテロワールを楽しめます。隣接したビストロも同シェフが担当しており、よりカジュアルな食事を提供しています。他にもホテルでのアクティビティとして、料理のワークショップもあり、地下の古い中世風の貯蔵室で開催されます。

最後にラ・ミランドをまとめると?

ラ・ミランドはひとことでいえば、フランスのアール・ド・ヴィーヴル (生活の美学)の素晴らしいアンバサダー。過去何世紀にもわたるデザインとラグジュアリーの世界へ誘うタイムカプセルです。温かい雰囲気の場所、アヴィニョンに歴史的な関心がある方におすすめのホテルです。


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Images: La Mirande — Avignon, France

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