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物価の波が大きい都市・パリにおいても、「価格以上の満足感」を求める美食家たちも存分に楽しめる希有なレストランが、ビブグルマンにセレクションされました。 今年のビブグルマン・セレクションのラインアップもまた、「価格以上の満足感」を求める美食家たちに存分にお楽しみいただけることでしょう。 選ばれた店は市内ほぼすべての区に点在し、新たに生まれ変わったビストロ、和やかなシェアプレートレストラン、地域の隠れた名店などで世界各国の料理を味わえます。パリの食文化の幅広さをあらためて感じさせてくれます。お腹を空かせて出かけましょう!
街を離れずに世界を旅する
サンティエ地区の「マム・フロム・ハノイ(Mắm From Hanoï)」(パリ2区)は北ベトナムの美食を楽しく味わえる店です。ベトナム出身のカップルが営むこの店では、自家製マムソースが添えられた豚肉春巻き、北部スタイルのフォーが提供されます。塩気と軽やかさ、繊細さと香りの複雑さが見事に調和しています。活気ある客席の様子からも人気の高さが伝わってきます。予約は必須です。
パリのアジア料理の老舗「ラオ・シアン(Lao Siam)」(パリ19区)は、タイとラオスの味わいを見事に融合させた料理を豊富なメニューで提供しています。内装はアジアの雰囲気を取り入れながらも、木製のパネル、水槽、仏陀の像など、ベルヴィルらしい、どこか雑多であたたかな雰囲気が漂います。ソウクサバン(Souksavanh)三兄弟は新鮮な素材で伝統的な料理を提供しており、スパイスが効いたスアロンハイ(Crying Tiger) やトムカー・スープ(Tom Kha soup)などがその代表です。

「BRU」(パリ9区)はインスペクターのお気に入りであり、若者の活気に溢れるスポットです。ジュリア・ド・ラガリーグ(Julia de Laguarigue)が経営するこのレストランでは、マルティニークの影響がフレンチ・ビストロ・スタイルと自然に融合しています。この「トロピカルフレンチ」ともいえる遊び心あふ れる料理は、シェフの言葉通り、ゲストを魅了する一連の絶品料理が揃います。例えば、ソース・シアンの鶏肉炒め、ココナッツミルクの白豆、セージバターや柑橘類などのサイドディッシュが提供されています。ピガールの美食の評判をさらに高める、魅力的な地元の人気スポットです。

パリのビストロの「永遠の進化」
すべての持続的な文化制度は時の流れとともに進化しなくてはならず、パリのビストロもその例外ではありません。現代的な変化を、伝統的な本質を損なうことなく受け入れることが求められます。カフェ、ビストロ、大衆酒場、居酒屋、立ち飲み屋、カブロー(庶民的な小さな酒場)やエスタミネ(地方に根ざした伝統的な酒場)など、カジュアルなもてなしのいかなる形にも 味覚を楽しませる力 があります。サン・ドミニク通りで愛されてきた、クリスチャン・コンスタン率いる「カフェ・コンスタン」は、20年にわたり、パリの「ビストロノミー」の土台としての地位を築いてきました。シリル・リニャックに引き継がれ、店は今「ビストロ・デ・ファーブル(Bistrot des Fables)」(パリ7区)と名付けられ、コンスタンの元右腕である、ダビッド・ボトローが率いています。定番料理を豪快にアレンジしたメニューが魅力で、例えばニシンのポム・ア・ルイユ添え、スモークダックとグリーンサラダを添えたデビルドエッグ(全部で9ユーロ!)、ブランケット・ド・ヴォーやローストしたホタテなど、ボトローが厳選した料理が揃います。日替わりメニュー(前菜・メイン・デザート)は、わずか29ユーロです。

長きにわたり、19区はパリのグルメシーンでは脇役でしたが、今日では、パリの東側は、レア・フルリオと兄弟のルイ=マリが経営する家族経営ビストロ、「カドレ(Cadoret)」(パリ19区)のような魅力的なスポットが増えています。シェフはビストロの定番メニューにクリエイティブなひねりを加えています。ミシュランのインスペクターはこの店のランチを高く評価しています。皮をパリっと焼き上げた風味豊かなチキンと、香ばしくローストした野菜の組合せが光ります。活気があり、気負わず美味しい食事を楽しめる、親しみやすい一軒です。
さらに南にある、「カプシュル(Capsule)」(パリ14区)はレトロシックなビストロで、その温かい雰囲気と心を引き寄せる料理で人気を集めています。シェフは、肉汁が美味しいローストチキンや、キャラメル風味のイル・フロタン(île flottante)など、シンプルながらも丁寧な料理の数々を披露しています。

食を分かち合う楽しみ
料理をシェアするスタイルはパリのレストランにおける人気の食事法として広まりつつあります。単に「共に食事をする楽しさ」を超え、グループや会食向けに工夫されたメニューが提供されるようになっています。カウンター席も増加しており、活気あるレストランのスタイルとして定着しつつあります。ワインバー「ル・ティルブション・ロディエ(Le Tire-Bouchon Rodier)」(パリ9区)では、シェフが“グレージングプレート”と呼ぶ、楽しいメニューに力を入れています。内容は、ビゴール豚のハム、鶏レバーのテリーヌとピクルス、ブルゴーニュ産エスカルゴ、野菜のピクルス、牡蠣、塩鱈のコロッケ、チーズプレート、カボチャのニョッキやスイートブレッドのキノコ添えなどより伝統的なメイン料理も揃っており、幅広い好みに応える内容です。ワインリストはぜいたくで、熱心なオーナーの手により日々更新されています。

「ファナ(Fana)」(パリ18区)では、訪れたゲストはまず、自信をもって調理された美味しいスナックから食事をスタートできます。たとえば、エスペレットペッパーとサヴォラマスタード、クレソンを添えたチストラソーセージ(バスク風ソーセージ)、アンチョビと貝類のオイルを添えたタラマ、グインディラバターを添えた手作りの白ハム、タラのリエットとコールラビ、赤玉ねぎのピクルス、マスタードピクルスとラディッシュを添えた田舎風テリーヌなど、とても多彩です。ガブリエル・グラス・フェルナンデス(Gabriel Gras Fernandez)とジョリス・サルダン(Jorice Sardain)のデュオは、季節のコースメニューを創作するために完璧なハーモニーで連携しています。たとえば「ヴォライユ・ジョーヌ (黄色い鶏肉)のバターナッツとオレンジ添え」のように、どの一皿にいたっても丁寧な職人技が際立っています。特筆すべきはジョリス・サルダンのデザートで、多層構造のチョコレートのクリエーションは、目を見張る完成度です。

2025年のパリのビブグルマンは、改めてパリという街が持つ豊かな食文化の多様性と、価格以上の満足感を得られる料理を実現するレストランを数多く生み出す力を証明しています。数種類のシンプルで良質な食材と、それを活かす十分な才能が、卓越性と親しみやすさを見事に両立させています。
Hero Image : © Salomé Rateau/Bistrot des Fables