Travel 4 分 2025年8月28日

台湾の名物麺料理7選:麺で知る台湾の多彩な味わい

路上の屋台から洗練された料理まで広がる、台湾の豊かで多彩な麺文化

台湾において麺は、日本と同じか、それ以上に、日々さまざまな形で登場する主食であり、この島の歩んできた歴史と多彩な文化の融合を映しだしている。蒸気立ちのぼる路上の屋台から、洗練された現代的な創作料理まで、麺の魅力はその手軽さとアレンジの幅広さにある

第二次世界大戦後、台湾にはアメリカの援助によって大量の小麦粉が届けられた。政府は「米の代わりに麺を」という政策を打ちだして麺の消費を促進。さらに、各地から移り住んだ人々は故郷の味の再現に努め、米が主流だった台湾でも徐々に麺が受け入れられていった。こうして、麺は単なる軽食ではなく、三度の食事に欠かせないものとなり、台湾の文化的多様性を体現する料理へと、今もなお進化している。ここでは、今味わいたい7種類の麺料理を紹介したい。

「江牛樓(Kou Gyu Rou)」の牛すね肉がのった牛肉麺 ©MICHELIN
「江牛樓(Kou Gyu Rou)」の牛すね肉がのった牛肉麺 ©MICHELIN

牛肉麺

台湾料理の代名詞ともいえる牛肉麺は国内外で親しまれている。台湾を離れて暮らす人々にとっては、口にすると故郷への懐かしさや恋しさが込みあげてくる一品だという。

コク深い紅焼から澄んだスープまで、そして細麺から幅広麺、さまざまな牛肉の部位に至るまで組み合わせは無限だ。それぞれに独自の魅力があるが、ひとつ共通して言えるのは、スープと牛肉をじっくり煮込み、どちらも完璧に仕上げるという料理人たちのこだわりである。

ビブグルマンとして掲載される「江牛樓(Kou Gyu Rou)」は 、はわずか6席の店。日本人シェフがラーメン職人の経験を活かして腕を振るう。好みで選べる刀削麺または細麺に、柔らかく煮込んだ牛すね肉がのった牛肉麺が供される。昔ながらの調理法に新鮮なアレンジを加えたスープは、 牛骨と醤油の風味が効いている。

ミシュランガイドには、他にも満足度の高い牛肉麺の店として、「天下三絕 (Tien Hsia San Chueh)」、「 可口牛肉麺(Ke Kou Beef Noodles)」、「老山東家常牛肉麺(Lao Shan Dong Homemade Noodles)」、「清真中國牛肉麵館(Halal Chinese Beef Noodles (Da'an))、そして 「穆記牛肉麵(Muji Beef Noodles)」を掲載している。

「繡球(Ajisai)」では、江浙地方の麺料理を中心に四川料理も揃える。© L'atelier de Minxi/Ajisai
「繡球(Ajisai)」では、江浙地方の麺料理を中心に四川料理も揃える。© L'atelier de Minxi/Ajisai

北と南、それぞれの麺のスタイル

台湾では、中国の南北両地域の麺料理を楽しむことができる。北部のスタイルは、刀削麺や手延べ麺のように、麺そのものの食感にこだわるのが特徴。南部の定番である排骨麺や搾菜などの漬物入りの麺などは、スープやトッピングが重視される。

台湾で最もよく見かける屋台料理のひとつが陽春麵で、汁なし、またはあっさりとした汁で提供される素朴な一品。もともとはラードと醤油だけで味付けされていたが、台湾では豚のそぼろや野菜、もやしなどを加えて、より厚みのある味わいに仕上げることが多い。

台中にあるビブグルマンの「繡球( Ajisai 」は、モダンな江浙スタイルの麺専門店で、大きな肉団子が主役の獅子頭麺、煮込んだスペアリブがのった排骨麺、葱油で和えた葱油拌麺などが、作り立ての種類豊富な副菜と共に味わえる。同じく台中にある「功夫上海手工魚丸(Kung Fu Shanghai Fish Ball)」 は、昔ながらの屋台風情を残す麺屋で、自家製の上海風葱油麺や伝統的な陽春麺、魚のすり身団子と漬物入りの汁麺などが楽しめ、どれも試してみる価値がありそうだ。北部や南部の中国麺を更に堪能したければ、「上海未名麵點(No Name Noodles)」、「木公麥面(Mu Gong Noodles)」、や 「老士官擀麵(Lao Shih Kuan Noodles)」も選択肢になる。

ごまだれで和えた「好朋友涼麵(Good Friend Cold Noodles)」の麺料理 ©MICHELIN
ごまだれで和えた「好朋友涼麵(Good Friend Cold Noodles)」の麺料理 ©MICHELIN

涼麵

台湾の涼麵の起源には諸説あるが、主に、屏東の眷村(軍人村)で四川風の麺料理をもとに発展したと考えられている。茹でたあとに冷やして、ごまだれ、ラー油、ニンニク、千切りきゅうりをたっぷりと混ぜ合わせた麺は、爽やかで香り高く、食欲をそそる。

一般的には油麺が使われるが、よりもっちりした食感を楽しめるよう、自家製の太麺を使う店もある。士林夜市のビブグルマン掲載店「好朋友涼麵(Good Friend Cold Noodles)」では、白酢の代わりにレモン果汁を使い、より爽やかなアクセントを加えている。辛さは好みに応じて調整でき、具だくさんの味噌味の卵スープとのセットが人気だ。スープには漬物やきゅうりの細切りが添えられ、爽やかさもある。

豚骨、鶏肉、野菜で作られた「鄭家切仔麵(Cheng's Noodle)」の風味豊かなスープ ©MICHELIN
豚骨、鶏肉、野菜で作られた「鄭家切仔麵(Cheng's Noodle)」の風味豊かなスープ ©MICHELIN

チェッラミィ(切仔麵)

伝説によると、チェッラミィ(チェッは上下に揺らすこと、ミィは麺を指す)は蘆洲の湧蓮寺に起源を持つといわれ、伝統的に「チェッラミィ」と呼ばれる。竹製の茹でザルに麺を入れ、熱湯の中で勢いよく上下に揺すり器に盛りつける。提供前に、揚げたネギを添えるので、たまらない香りが広がる。

こうした屋台では、豚の横隔膜、心臓、レバーなどのもつも取り揃えており、素朴ながら深い味わいを堪能できる。滋味あふれるチェッラミィを求めるなら、「鄭家切仔麵( Cheng’s Noodles」、「賣麵炎仔(Mai Mien Yen Tsai)」がおすすめだ。

「小公園擔仔麵(Small Park Danzai Noodles)」は、炭火焼きのエビと煮豚の風味豊かなスープに、とろりと輝く味付け卵をのせたスタイルで知られる。©MICHELIN
「小公園擔仔麵(Small Park Danzai Noodles)」は、炭火焼きのエビと煮豚の風味豊かなスープに、とろりと輝く味付け卵をのせたスタイルで知られる。©MICHELIN

担仔麺

台南の擔仔麵(担仔麺)は、チェッラミィよりも小ぶりで、全く異なる魅力を持つ。浅い器に盛られた麺は、数口ほどで食べられる量で、間食としても親しまれている。

一方、そのサイズに反して、味にはパンチがある。海老の頭から取ったスープは濃厚な海鮮の旨味を湛え、麺の上には海老、香菜、刻みニンニク、仕上げには、じっくり煮込んだ肉そぼろがひと匙添えられる。

この料理は清朝末期、(福建省の)漳州出身の洪芋頭という人物が天秤棒を担いで麺料理を売り歩いたのがルーツとされ、その伝統は台南のビブグルマン掲載店「小公園擔仔麵(Small Park Danzai Noodles)」にも受け継がれている。炭火焼きのエビや煮豚の入った風味豊かなスープに、とろりと輝く鴨の味付け卵をのせたスタイルは、多くの人々に愛されている。

「誠實鍋燒意麵(Cheng Shi)」 で人気の一皿。©MICHELIN
「誠實鍋燒意麵(Cheng Shi)」 で人気の一皿。©MICHELIN

台南の意麺(卵麺)

台南の「意麺」には、揚げた麺と揚げていない麺の2種類がある。前者は鍋焼意麺や田ウナギ麺などに、後者は塩水意麺のようなシンプルな料理に使われる。

揚げ麺は広東省の「伊府麺(E-fu noodles)」に由来し、香港では長寿祝いの宴の定番料理だ。卵で作られた麺は、揚げることで豊かな香りとパリッとした食感が生まれ、濃厚なスープとよくなじむ。

台南では、鰹節と昆布の出汁に香ばしい揚げ麺を合わせた鍋焼意麺は、ほっとする日常の味で、朝食から夜食まで幅広く楽しまれている。ビブグルマン掲載店「誠實鍋燒意麵(Cheng Shi )」では、アサリたっぷりの一皿が有名です。一方、東門圓環の近くにある老舗「城邊真味鱔魚意麵(Eastern Castle Noodles)」 では、強火でさっと炒めた田ウナギ麺が人気です。高雄で、炒め田ウナギ意麺が好きな方の定番の店といえば「台南旺(Tainan Wang)」です。

台南の「麥謎食驗室(BUĒ MI . LAB)」の台湾の食材を活かした料理 ©MICHELIN
台南の「麥謎食驗室(BUĒ MI . LAB)」の台湾の食材を活かした料理 ©MICHELIN

創造性あふれる麺料理

新世代の料理人たちは、伝統的な麺料理に革新的な発想を吹き込んでいる。台南にある「吃麵吧( Jai Mi Ba)」は、高級フランス料理店の元シェフが手がける店で、西洋の料理技法を用いながら、名物料理である担々麺やコンソメで仕立てた牛ほほ肉の麺に使うスープやソースを丁寧に作り上げている。

麥謎食驗室(BUĒ MI . LAB)」は、台湾語の「麺を売る」というフレーズをもじった店名で、シェフの海外経験を活かした台湾の食材使いが見事だ。看板メニューとして、東南アジアのサンバルソースや剥皮辣椒(皮むいた唐辛子の漬物)の風味を巧みに組み合わせた創造的な料理を提供している。

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