Hôtel de Tourrel

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの「星月夜」や「ポピー畑」を見たことがあれば、サン=レミ=ドゥ=プロヴァンスもご存知でしょう。あの有名な耳事件の後、ゴッホはこの地の精神病院で過ごしながら地元の風景を描き続け、その数は百枚を超えます。静かな街ですが、少しばかりのお金を握って訪れるアート好きの旅行者に人気の場所です；中心部の旧市街にはアートギャラリーやビストロが並び、その中で数少ないブティックホテルの１つとして誕生したのが「オテル・ドゥ・トゥレル（Hôtel de Tourrel）」。

建物は17世紀の邸宅をエレガントに修復したもので、高い天井や装飾が施された外壁など、基盤となるホテルのストラクチャーには歴史を感じます。そして建築家であるオーナーは、何年もの間に塗り重ねられた塗料の層を取り払い、当時の美しい漆喰の壁を露出させました。重要視するのは量より質。元々は24あった客室も僅か７つのスイートに作り変えられたのです。入念な改装を経て完成した空間は美しく、全てのスイートはとても洗練されています。元々はロマンティックな作りであった内装も、そこにミッドセンチュリー調の家具を配置することによりバランスが保たれているよう。アースカラーと爽やかな白を基調とする内装とや元々の木製シャッターが魅力と個性を加えています。床暖房が仕込まれた石材やウッドのフロア。キングサイズのベッドや天井まで広がる大きな窓。そしてApple TVやロクシタンのバスプロダクトなど、全てが標準装備です。一部のスイートには独立のバスタブがあり、ほかにも専用テラスが備わっています。No.3は古い石壁が特徴的で、ロフトスタイルであるNo.7も2つの高さから街を見渡せるのが魅力的。

オテル・ドゥ・トゥレルにはモダンな地中海料理を提供する素晴らしいレストランがあり、ミシュランスターを獲得していることも納得です。近くには世界で最も有名なワイン産地もいくつかあります。その１つを訪れる前に、スリックな木製カウンターが美しいワインバーでシャンパンを開けたり、地元の品種をテイスティングするのも素敵です。ホテルの近くに点在する34のワイナリーにあまり価値を感じない人もいるかもしれませんが、フランス人にとってそれが重要なことなのは言うまでもありません。ゴッホの絵画で描かれたような鮮やかなポピー畑や、壮大な夜空が現実に存在するかは分かりません。実際のところ、彼がその作品に写し出した風景がどこまで記憶や想像力によるものなのか、それは本人のみぞ知るところでしょう。ただひとつ言えるのは、ここでスイートを1つでも確保することは決して容易なことではありません。

備考：オテル・ドゥ・トゥレルは季節限定の施設で毎年10月下旬から3月中旬まで休業します。

アクセス：オテル・ドゥ・トゥレルはマルセイユ・プロヴァンス空港からA7/D99A経由で車で約75km、モンペリエ・メディテラネ空港からA9/A54経由で105kmの場所にあります。また、アヴィニョン駅（約20km先）、エクス＝アン＝プロヴァンス駅（約75km先）へのTGV利用でもお越しいただけます。