ミラ ムーン / Mira Moon

近未来的な高層ビルや超モダンなデザインホテルが集まるこの街で、遊び心を効かせた「ミラ・ムーン（Mira Moon）」は、文化的歴史への意識とユーモアのセンスでほかと一線を画したホテル。香港の歓楽街として知られる湾仔にある、客室総数91部屋のこのホテルは、話題のデザインユニット、ワンダース＆ユー（Wanders & yoo）が最近完成させたもの。名前の初めの半分はもちろん、これまでいくつものユニークなデザインホテルを手がけてきた、あのマルセル・ワンダースです。

ミラ・ムーンのデザインは、中国神話の玉兎（月のウサギ）と姮娥がヒントになっているそうですが、近代的に再表現されたそのイメージは本当に見事。インテリアは贅沢かつドラマチックなのに、どこか子供心を残したかわいさがあり、言うならば東洋風に仕立てた不思議の国のアリスの世界を思わせる空間です。館内ではオランダのモダン要素と中国神話のイメージが交じり合い、巨大なウッドランターンや、キュートなチューリップ型の椅子、目を見張る純白ラッカーや繊細なモザイクがほどこされた壁、鮮やかな牡丹やウサギのモチーフといったディテールが目に留まります。ひっそりとした秘密のガーデンや、エレガントなシノワズリをまとったスタッフの存在も、ホテル全体のマジカルなイメージにぴったり。ポリッシュされた木材の天井がムードを作り出す客室には、バスタブ付きのゴージャスな大理石のバスルーム、iPadミニやネスプレッソ・マシンといったテクノロジー設備 。

すでに定番となっている姉妹ホテル「ザ・ミラ 香港（The Mira Hong Kong）」と同様に、ミラ・ムーンはスタイルコンシャスなビジネストラベラーや旅行者にアピールする一軒。けれど、比較的小規模なこともあって、こちらは更に絞られた客層にうけそうです。スイミングプールやスパはなく、ロビーもそこまで大きくはないけれど、ここに泊まる高度なデザイン知識人は、わざわざ香港に来てまで泳がなくても、気にならないはず。