Hotel Cycle / ホテル サイクル

やりすぎなくらいにテーマ性を徹底したホテルが、違和感なく生まれるのは日本だけ。確かに「Hotel Cycle（ホテル・サイクル）」はニューヨークやロンドンなどいささか食傷気味だけれど先端を行く街に、鳴り物入りで上陸してもおかしくなかったのに、と思うかもしれません。けれども日本において、皮肉っぽさはクールとはかけ離れたこと。ここでは“クール”というのは全身全霊でのめりこむことを意味します。そしてHotel Cycleは、その名が示す通り、徹底的に“サイクル”にこだわっているからこそ価値あるホテルなのです。

ここ広島の新たに再開発されたベイエリアにある複合施設ONOMICHI U2では、ペダルから足を下ろす必要さえありません。自転車にまたがったまま、広々とした空間へと乗り入れ可能。Hotel Cycleだけでなく、レストラン、バー、カフェ、ベーカリー、さらに巨大なサイクリング専門店まで揃い、ショップエリアでは地元の食材や衣料品、雑貨を見つけることができます。

海運倉庫をリノベーションした建物の内部は、二階分吹き抜けの天井や歩道橋などに、かつての面影が。けれども自然素材をふんだんにあしらった客室は、オーガニックな温もりが漂い、もともとのインダストリアルな雰囲気を緩和。邪魔にならないよう自転車を掛けられるサイクルハンガーなど、サイクリストに配慮した設備も期待通りです。とはいえ、谷尻誠氏が建築デザインを手がけ、名和晃平氏が監修を務めるULTRA SANDWICH PROJECTによる作品が設置されているとなると、建築好きやアートラバーの心もぐっとつかむはず。

このようにとても快適ではあるのだけれど、ONOMICHI U2に閉じこもっていては絶対にダメ。なんといっても、このホテルは、日本が誇るサイクリストの聖地、瀬戸内しまなみ海道の起点となる尾道にあるのですから。このサイクリングロードは、6つの小さな島と数多くの橋を経て本州と四国をつなぐ道路。この手のものとしては楽に走れ、景色も最高！ Hotel Cycleには、こうした旅のかたちを広めたいという願いが込められているのです。

【アクセス】JR山陽本線 尾道駅から徒歩５分または、山陽新幹線 新尾道駅よりタクシーで15分