21c Museum Hotel, Louisville

一見すると、ケンタッキー州ルイヴィルは、「21c」のようなホテルには最も似つかわしくない場所に思えます。ただ単に傑出したモダンブティックホテルなだけでなく、1,500㎡の広さを持つ現代アートギャラリーでもあるのです。ここは、ニューヨークやロサンジェルスにいる人たちでさえも夢中にさせてしまうような場所です。しかも、ちょうど中西部から南部へと変わるルイヴィルにあるのですから、嬉しい驚きです。しかし、ルイヴィルは脱産業都市で、現在は再復興過程にある都市なのです。スポーツチームを誘致したり、郊外に商業複合施設を次々と建てたりする都市がある中、ルイヴィルはアート＆カルチャー路線を進んでいるのです。

「21ｃ」は地元出身のスティーブ・ウィルソンとローラ・リー・ブラウン夫婦の所有で、ホテルのギャラリーは、夫妻の財団が所有するアートコレクションであふれています。夫妻は、イェールの新しいアートスクールやスコッツデール・モンドリアン・ホテルなどを手がけた、ニューヨークを拠点に活躍する建築家デボラ・バークを呼び寄せました。そして、もっと規模の小さい地方都市にあるブティックホテルでは、生半可な考えでモダンデザインの路線を選びつつ、伝統主義者を遠ざけないような注意を払ったりすることが多いのですが、この点「21c」は伝統主義者のことは全くお構いなしの姿勢をとっています。

客室は都会的で、美術作品や特別にデザインされた家具、iPodや42インチLCDテレビなどのハイテク設備であふれています。館内のレストラン「プルーフ・オン・メイン」は、ダウンタウンのダイニングシーンに洗練されたテイストを吹き込んでいます。そしてもちろんここの美術館は、このあたりで一番のアトラクションの一つです。ルイヴィルが第二のマンハッタンになる道のりは長いかもしれませんが、「21c」が、今までケンタッキーに行こうなんて考えたことも無かったアート好きの旅行者たちを惹きつけるきっかけとなるのは明らかです。