Chiltern Firehouse

シャトー・マーモントや各都市のスタンダード・ホテルを成功させてきたアンドレ・バラス（André Balazs）氏が手がけたホテル、とあれば、そのクオリティはお墨付き。ここ、「チルターン・ファイアハウス（Chiltern Firehouse）」はオープンするかしないかの内から、満員御礼。早くも、イギリスやヨーロッパはもちろん、アメリカやその他の国からもひっきりなしに有名人が訪れる、セレブスポットとして知られるように。

その人気の秘密は、ホテルとしてだけでなく、レストランとしても特筆すべき場所だから。厨房には、ベスナルグリーンのタウンホール・ホテル内でミシュラン星付レストラン「ヴィアジャンテ」を指揮したシェフ、ヌノ・メンデス（Nuno Mendes）を起用。飲食業の競争激しいロンドンでも、彼のユニークな才能と料理には、やっぱり話題になるだけの価値があるのです。もちろん、近年どんどん注目度を高めているメリルボーン地区の片隅にある、ビクトリア王朝式の消防署を改造したという、その舞台も個性たっぷり。探検好きな方はホテルが貸し出してくれるシャイノーラ（Shinola）社の自転車で街へ出発。部屋でゆっくりしたいという人もご心配なく。著名人が多く集まるということは、グラマラスでお洒落ながらも、プライバシー重視の丁寧なサービスが期待できるということですから。

また、インテリアの方も、「さすがバラス氏！」と感嘆させられる、居心地よい仕上がり。氏と、チルターンの専属クリエイティブチームにより、細かいディテールやゲスト体験まで考慮して作り込まれたこの空間。まるでたまたまポンと出来上がったかのような、さり気ない完成度は、まさに細やかな知識と技があってこその結果なのです。

ホテルとしては、スイートルームも含め客室総数26部屋と、こぢんまりとした物件。でもその分、客室はとにかく贅沢。ただし、そのスタイルは、攻撃的なまでに気取りまくった数十年前のデザイナーズホテルとは正反対。どの部屋にも暖炉と広いアールデコのバスルームが付いていて、心地よい温かみに溢れています。また、滞在ゲストはレストランへの優先アクセスに加えて、バー内に隠された秘密のラウンジ「ラダー・シェッド（Ladder Shed）」の利用も可能。ここはホテルゲストと、限られた特別客だけが足を踏み入れることのできる場所。人が訪れたいと思う場所を作ることも、ホスピタリティのうち。それを考慮しても、チルターン・ファイアハウスは大成功例と言っていいでしょう。