Four Seasons Hotel Las Vegas

ラスベガスでなければ、フォーシーズンズのトレードマークである上品さがこれほど真新しく大胆な印象を与えることはありません。ラスベガスは変わりつつあると言われています。もちろん、ホテルの招待客用の部屋に泊まり、ステーキビュッフェの朝食を食べ、スロットマシーンにかじり付くというベガスならではの過ごし方もできますが、それはダウンタウンでのこと。今、出現しつつある新しいラスベガスでは、まずいスパゲティの代わりに、カリフォルニア料理の元祖ウルフギャング・パックや有名シェフ、ジャン・ジョルジュ・ヴォンヘリクテンの料理に舌鼓をうち、エンターテイメント集団「シルク・ド・ソレイユ」のショーに子供と一緒に夢中になり、ベラージオ・ホテル＆カジノ・ラスベガスの圧倒的なアートコレクションの前にため息をつくのです。

言うまでもなく、「フォーシーズンズ・ホテル・ラスベガス（Four Seasons Hotel Las Vegas）」はラスベガスに紛れ込んだ異邦人のよう。趣味は良くてもきらびやかで騒がしいお隣りのベラージオやマンダレイ・ベイ・リゾート＆カジノとは対照的に、5階建て458室という比較的小さな規模でカジノはありません。ベガスの大通りの中心にありながらベガス的でない空間です。

客室は、ラルフ・ローレンの豪奢な椅子、四柱式ベッド、ブルガリずくめのトイレという、フォーシーズンズ特有のスタイルで、朝刊を客室まで届けてくれます。一流のアメリカンステーキハウスと地中海料理のレストランがあり、スパでは大人気のジャワ風トリートメントを受けられます。しかし、ラスベガスを楽しむにはフォーシーズンズは向いていないのではと思う人もいるでしょう。ところが、ここと隣りのマンダレイベイとは連絡通路でつながっているので、ラスベガスならではのエンターテイエントを次から次へと楽しむことができるのです。そして騒がしさから逃れたくなったら、通路を伝ってまったく異なるフォーシーズンズの世界へと脱出すればいいのです。

プールはとても穏やかな雰囲気で、プールサイドではスタッフがミネラルウォーターを体に吹きかけ、疲れた目にキュウリのスライスを載せてくれます。またロビーには、他のホテルではお約束のギャンブルスペースやきらびやかな照明がありません。ロビーだけでなくホテル全体が静かで落ち着いていますが、客室の窓を開ければ街の熱気と喧騒が飛び込んできます。

ラスベガスは第2のリビエラと言われていますが、街の代名詞とも言える派手さは今もとどまるところを知りません。このホテルはラスベガスで唯一、堂々たる上品さを主張しています。他の街でなら気付かないかもしれませんが、ラスベガスの中心では旅人の心を鷲掴みにするでしょう。