ハンブル ハウス 台北

質素な家、という意味を持つ名前ながら、「ハンブル・ハウス（Humble House / 寒舍艾麗酒店）」は質素でも、単なる家でもありません。台北に登場したこのホテル、実際のところはゲストルーム全200室以上を抱える、洗練された都会的な一軒。その名前は、ノーベル文学賞受賞詩人、故ラビンドラナート・タゴール氏が1916年に筆した詩句がインスピレーションとなったとのことだけれど、“人生は美しく咲かせよ、夏の花のように”という彼の言葉から想像できる鮮やかな色彩とはうって異なり、基調色もグレーを主体とした中間色ばかり・・・。

でも、そんなハンブル・ハウスも、考え方によっては質素であると言っていいのかもしれません。それは、シンプルながらスマートな建物の造りや、エコフレンドリーな経営ポリシー、芸術を積極的にサポートする努力といった点に見られます。活気ある信義区にある、ガラスとアルミ製のエコなビルの中に入ったこのホテル。混み入った都会の中心地にありながら、6階には庭園が造られているほか、館内にはアートギャラリーがあり、600点以上のオリジナル作品が建物の構造に組み込まれるようにして飾られています。近代中国人アーティストの作品は、フィルハーモニア台湾こと国立交響楽団の元主席フルート奏者、エリー・ライ（賴英里）がキュレーションを担当。そよ風に紙が吹き飛ばされたかのような、地階上部に設置されたユーモアのあるインスタレーションをはじめ、館内に集められた作品の多くは、文明と自然の関係性をテーマにしているのだそう。

一方、客室はコンセプト面ではそこまで凝っていないものの、穏やかな雰囲気と上質な素材の存在感がしっかりと伝わってきます。一番シンプルな部屋でさえも、特製シルクベルベットのバスローブや羽根布団、サラウンドステレオに40インチのHDテレビ、ネスプレッソのコーヒーマシン、無料Wi-Fiが用意され、リュクスな憩いの空間になっています。最も贅沢なスイートルームを選べば、バトラー（執事）サービス付き。台北市内のスカイラインを一望にする見事な眺めと、高級英国製バスグッズやスウェーデン製の特製マットレスといったアップグレードが楽しめます。

館内の「ラ・ファルファッラ（La Farfalla）」は、お洒落な地中海風レストラン。6階の庭園に併設された「テラス（Terrace）」は小皿料理とドリンクが楽しめる空間。そのほか、スパ、フィットネスセンター、ラウンジチェアに囲まれた屋外温水プールなど、施設も充実。質素というのはやはり、考え方によってその表現方法が異なるのかもしれません。