The Pilgrm

アルファベットが一つ足りないように見えますが、「ザ・ピルグリム（The Pilgrm）」のスペルは、間違いではありません。ロンドンのパディントン駅からすぐ、ノーフォーク・スクエアに登場したこのホテルは、あえて二つ目の“i”を外しているんです。フロントデスクというものは特に用意せず、チェックインは到着前にオンラインで完了。ロンドンと聞いて思わず心描くビクトリア朝風のロマンチックなバスタブもなければ、客室空間も大した広さはありません。Lサイズの部屋さえ、ロンドンの標準的なホテルと並べると小さめ。簡単に言ってしまえば、ザ・ピルグリムは、無駄を省いて必要最小限をスッキリ収めたホテルなんです。

嬉しいことに、それは料金に関しても同様。いつになく物価の高いロンドンでは、ごくフツウのホテルでも一泊数百ポンドするもの。けれどベテラン揃いのザ・ピルグリム経営者チームは、宿泊料金をお手頃レベルに抑えるため、見事な技とセンスで省ける部分を省いた、というわけです。そして、結果はご覧の通り。家具やサービスの上手な選出で、スマートかつ倹約的な仕上がりに。決してケチっぽさや物足りなさを感じさせることはなく、意図的にミニマリストな雰囲気になっている、と言えるでしょう。

もちろん、その魅力を一層アップさせているのはその空間。200年物のマホガニー製の床や、シャキッと都会的なタイル使いやモダンな調度など、目を楽しませてくれる要素がたっぷり。鋳鉄のヒーターや手動開閉式の窓など、テクノロジー面はちょっとレトロなほどベーシックですが、これもどこか温かみがあって良いのでは。

地階には滞在客に紛れて地元っ子も立ち寄るカフェがあり、上層階のラウンジでは独創的なカクテルと、おつまみメニューを用意。パディントン駅からすぐ近く、という点にはすでに触れましたが、ノーフォーク・スクエア近辺はアーティーなボヘミアンっぽさが魅力のエリア。ロンドンみたいな街では希少なこのリラックスムードにじっくり浸ってみるのもお勧めです。