The Place Firenze

フィレンツェにはたくさんの古風な宮殿ホテルと、いくつかのモダンデザインのブティックホテルがあります。「JKプレイス・フィレンツェ（The Place Florence）」はどちらかと言えば後者に属しますが、一風変わっています。インテリアデザインを担当したのはルンガルノ・ホテルズを手がけた建築家なので、モダンでシックなインテリアを知らないわけではありません。しかしこのホテルはルンガルノとは根本的に異なるテイストです。

突き詰めていくと、このホテルの個性は親密な雰囲気にあるようです。たとえばここにはレセプションデスクがありません。また人通りの多いサンタマリア・ノヴェッラ広場に面していながら、建物の内部に入ってしまえば街の喧騒はほとんど気になりません。レセプション代わりの小さな居間には暖炉があり、たくさんのアンティークやアート作品が並んでいて、ホテルというよりは誰かのお屋敷のよう。たった12室というこぢんまりとした規模も、知人の屋敷に遊びに来ているような錯覚に陥る原因かもしれません。

ホテル内での過ごし方はさまざま。図書室の本棚を覗いたり、絵画などを鑑賞したり、他のゲストとおしゃべりしたり、あるいは自室でゆっくりくつろいだり。客室は今と昔が美しく融合した空間で、ロンドンのシックなブティックホテルを思わせます。落ち着いた色調の中に、ルイ15世様式の暖炉やパネルの壁、四柱式ベッド、そして薄型テレビなどの最新技術設備が仲良く共存しています。室内は驚くほど広いわけではありませんが、ロマンチックな旅なら気にならないでしょう。ここには豪華な設備やサービスはありませんが、旅人にとっては快適でエレガントな「もう一つの家」なのです。

中庭はガラスの屋根で覆われていて、朝食用のダイニングになっています。また屋上のテラスでは広々としたソファに寝転んで美しい街を眺めることができます。ここはB&B（朝食つきホテル）ですが、ルームサービスは午後11時まで利用可能です。またホテルの玄関から数分のところに素晴らしいレストランがたくさんあります。コンシェルジュにお奨めを尋ねるもよし、あるいは自分の五感や第六感を頼りに探索するもよし。フィレンツェを訪れたなら、一日中ホテルに篭もっているなんてもったいありません。
備考：テラスは3月から11月まで営業しています。