賑やかな駅は、リラックスした滞在一泊 を求める人にとっては不向きに思えるかもしれません。しかし、1915年に建てられた東京ステーションホテルは、日本のホテル史を語るうえで欠かせない施設です。アイコニックな東京駅舎内にあり、重要文化財に指定されている国内唯一のホテル。2012年、東京駅丸の内駅舎保存・復元工事 によって生まれ変わりました。私は友人と共に、東京で休暇を過ごすために電車に乗り、ホテルへ向かいました。
到着
赤レンガの駅舎を見ただけでは、この中にホテルがあるとは想像できないでしょう。東京でも慌ただしいターミナルのひとつである東京駅。行き交う人々のエネルギーを感じた後、東京ステーションホテルに足を踏み入れると、別世界が広がっていました 。幼い頃、駅に泊まることを夢見た人もいるでしょう。とはいえ、私たちがこのホテルに感じた最初の魅力はずっと現実的。改札を通り抜けて数分でホテルのロビーにアクセスできる利便性でした。とりわけ、私たちが到着した日、東京は大雨。なおさら有難みを感じたのでした。ロビーのヨーロピアンな装飾は 上品で時代を超えた優雅さを醸し出します。 大理石の床には、“旅人の喜び”が花言葉であるクレマチスから着想を得た真鍮のデザイン。新幹線・成田エクスプレスを使って到着するゲストは、東京駅のプラットフォームまで迎えにきてくれるサービスを利用することもできます。
ユニークな眺めの部屋
１ミシュランキーとして選出された東京ステーションホテルには、皇居や丸の内の街並み、そして駅の景色を望む客室が150室 あります。3階のクラシックコンフォートツインルームからは、駅前と周辺の街並みを見渡せます。室内はクラシックな家具、アーチ型の天井と、シャンデリアからの柔らかな明かりが相まって、落ち着いた雰囲気。大きな窓のそばにある二脚のチェアは、就寝前にくつろぐのにぴったりのスポットです。広々としたデスクもあり、ワーケーションや出張にも最適でしょう。ユニークな体験をしたいなら、人気のドームサイドの客室を予約してみては。丸の内の南口側と北口側に面し、駅構内の 見事なドーム天井を眺めることができます。ドームには、駅の開業当初から復元されたレリーフが飾られており、十二支のうちの八支や、クレマチスの花などがモチーフになっています。満室でも心配はいりません。宿泊客専用の3階バルコニーからも同じ景色を楽しめます。 忙しなく行き交う乗客や買い物客を目で追うだけでも特別な体験だと言えるでしょう。
館内散歩
東京ステーションホテルは 、線路に沿って南北に広がっており、前述の北ドームと南ドームが中心。駅構内であっても、宿泊客のみが立ち入れるエリアには、ゲストカードキーをかざして入ります。館内を散策すると 様々な展示に出会えるのも楽しみ。2階から4階の壁は、鉄道、東京駅、そしてホテルの歴史を描いた100枚以上の写真、絵画のギャラリーになっています。広い館内を効率的に巡る には、見どころを記載したツアーガイドを片手に歩くのがおすすめです。
朝のひととき
素晴らしいロケーションとエレガントな客室に加え、滞在のハイライトは、４階「アトリウム」での朝食ビュッフェ。宿泊者のみ利用できます。甘い香りを身にまとったペストリーの数々、ローストビーフ、オムレツステーションなど、様々なメニューが揃っています。また、ホテルには、イタリア料理や焼鳥など多様なジャンルのレストランやバー、そしてフィットネスセンター、スパなどの施設があります。ゆったりとした一日の始まり、お腹が満たされたあとは、チェックアウトして駅構内にあるもう一つの見どころ、東京ステーションギャラリーへ向かいました。駅の外観を彷彿とさせるレンガ造りのギャラリーでは、現代美術、建築、鉄道に関するさまざまな展覧会が開催されており、混雑する駅の中であることをすっかり忘れさせてくれます。上品でありながら心地よい滞在を締めくくるには最適な場所と言って間違いないでしょう。
